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特別取材

「芸どころ博多」の発展に尽力 (株)博多座顧問 青柳紀明氏
特別取材
2008年9月20日 09:30

[COMPANY INFORMATION]
所在地:福岡市博多区下川端2-1
TEL:092-263-5858
URL:www.hakataza.co.jp

「博多座」の代表取締役に就任して

 ―福岡で文化の薫りを醸し出すには、やはり一定の都市化がなされなければ、発信するに至らないと思います。福岡市の職員として、福岡の都市化の起点はどこにあったと思われますか。
 青柳 天神地下街が完成し、それに続いて市営地下鉄が開通、営業運転を始めたころが、福岡の大型都市化の起点と言えるでしょう。これを境に街の様子、顔付きも変わっていきましたね。
 ―都市型軌道交通のインフラ整備は、やはり大型都市化の重要なファクターとなりますね。
 青柳 その通りです。時を同じくして市内の小学校すべてにプールを整備し、教育環境の充実化を図ったのも、大型都市化への対応策のひとつと言えます。

福岡市も市内周辺部の人口が見る間に増大し、児童の数が飛躍的に増えましたから、とにかく小学校をどんどん作らなければなりませんでした。あの頃は人口の増加と各種インフラ整備が同調し、福岡市の大型都市化が進んでいた時代でした。
 残念ながら、昨今の少子化で過疎化、空洞化が進み、学校、教室ともに余っている状態ではありますが。
 ―ほぼ半世紀の長い間、市の職員として公僕生活を送られ、あまり文化事業には縁が無かった職域だったと思います。そこから博多座に出られたわけですが、盛り立てながら統帥していくことは大変なご苦労だったでしょう。
 青柳 たしかにそうでしたが、市役所に長い間奉職していたおかげで、実にさまざまな人々と知り合うことができ、人脈には事欠きませんでした。博多座の社長就任という唐突なことにも、それまで培った人脈を活かして一人ひとりに接触し、博多座の興隆にいかに結び付けるかを一生懸命考え、行動に移すよう努力しました。

 政財界、文化人など、ありとあらゆる方々にお会いして、お願い、ご相談、ご助言、ご援助などの面で、また新たな人のご紹介など、本当に人のありがたみが我が身に染み入る思いをさせていただきました。この地道な私の活動は社員たちにも少しずつ伝わったようで、彼らの心も徐々に変わり始めました。自ら身体を動かすようになり、博多座全体が少しずつ動き出したのです。
 ―その地道な活動が、第三セクターが陥りやすい甘えがちな赤字容認体質から脱却し、黒字にこぎつけた訳ですね。
 青柳 私の長年にわたる市役所勤務で営々着々と積み上げ培ってきた人脈を活用することが、成功へとむすびついた要因でしょう。私自身もそのつもりで取り組みました。社長を任期満了で退任しましたが、引き続き社員、若手スタッフのお役に立てることがあれば最大限に私を活用して欲しいと考え、今でも顧問として籍を置いています。

劇場経営の現実に直面

 ―博多座という施設は、福岡・博多においてどのような位置付けだとお考えですか。博多座の近くを歩いていると、どこからともなく文化の風というか薫りが漂うようで、とても良い場所だと感じています。このような場所が福岡にもできて本当に良かったし、大切にしていかなければならないと思います。
 青柳 ありがたいお話です。私も福岡にとって貢献度の高い場所にしなければならないと考えています。この地域の再開発計画が立ち上がり、実現へと向かっていたころ、私は市の中小企業指導課におりました。建設当初は内部視察をしていたものですから、この地域には人一倍愛着を感じています。だからこそ、愛すべき地域、好きな場所だと聞くと、とてもうれしい限りです。
 ―しかし、当時の博多座はかなりの赤字経営で、周囲のモチベーション、士気も低い状況だったと思います。それを黒字に転換させることは、とても大変ではありませんでしたか。
 青柳 私の持つ人脈を使い、思いつく限りのすべての人々にお会いして、頭を下げてまいりました。おかげで皆さまの共感を得て、そこからさまざまなことが動き始めました。それは周囲だけでなく、博多座の内部でもうごめき始めたのです。どこに行くにも、スタッフ一丸となって公演のチケットを持っていき、買っていただけるようにお願いしてまわりました。そのことが黒字転換する大きなきっかけとなり、効果となってあらわれてきたのです。
 ―足を使って1枚1枚チケットを売っていく、それであの大きな赤字が黒字になったのですか。ほかにも何か大きな手を打たれていたのではないのですか。
 青柳 いえ、その地道な活動が結実したのです。これといった、目立った営業活動や広報活動などではなく、社員全員の足を使った努力が段々と実を結び、明るい展望がひらけてきました。その明るさを目の当たりにしたほかの社員たちも一層のやる気を見せ、モチベーションや士気が高みに登り、さらに素晴らしい効果が生まれました。それが続いた結果の黒字転換です。

これからの博多座

 ―ここ数年、北島三郎さんの座長公演がかなりの評判を得ているようですが。
 青柳 これまでも数回、公演を組んできましたが、昨年の公演が一番評判が良かったですね。終盤にはチケットが完売してしまい、どうしても欲しいと言われてもお断りする状態でした。別枠でVIP用に席を残しているのだろうと言われても、残りは本当にまったく無く、結果、去年に北島三郎さんの公演の過去最高動員数を記録しました。
 ―北島さんや森光子さんなどの座長公演で、主役のお二人以外にも、主要な脇役としてそれなりに有名な役者さんも、ほぼ1カ月間、博多に来られます。一公演あたりの費用は、相当な額になるのではないかと思うのですが。
 青柳 一公演とはいっても、興行会社を頂点として、座長、共演者、舞台装置、照明、音響、特殊効果、それに付随するスタッフ、そして衣装、小道具、床山、化粧などのありとあらゆる道具とそれに係るスタッフ、出演者のマネージャー、付き人などの膨大な人間が動いて、ようやく成り立つのです。それらの人々の宿泊や食事まで入れると多大な経費がかかり、道具費、人件費、出演料などが重なってくるため、当然ながらそれなりの額にはなりますね。
 ―以前から世界中で話題になっているミュージカル「ミス・サイゴン」の上演が来年に決まったそうですね。私もニューヨークとロンドンで数回見たことがありますが、とても素晴らしいミュージカルだと感動しました。それが福岡での公演となると、心のどこかで、大丈夫だろうか、果たしてきちんと受け入れられるだろうかという思いがあります。
 青柳 来年明けの1月早々からの公演が決定していますが、今回の公演は3カ月のロングランで、周囲からは無謀だとも言われています。さまざまなお声はいただいていますが、要はやり方次第だと思っています。公演初日から千秋楽まで、3カ月間を通して盛り上げていかなければなりませんから、初日から徐々に話題となり、ようやく後半で盛り上がった、では駄目なのです。

 「ミス・サイゴン」は、舞台装置や仕掛けが非常に大規模のため、東京ですら1劇場でしか上演できないほどです。仕掛けと上演には、それを受け入れられるだけの舞台上のキャパシティが必要となります。

 博多座は、「ミス・サイゴン」でも上演できるキャパシティの大きな劇場として当初から設計・建築されました。ぜひとも、この福岡の地で「ミス・サイゴン」を上演したいと燃えていたのです。だからこそ、この公演を何としても成功させるべく、中国地方以西の西日本全域の各県、各自治体、各県商工会、財界などすべて巻き込んで公演をアピールし、協力を取りつけてチケットを販売していかなければならないと考えています。
 ―博多座社員一丸となってチケット営業する、というだけでは足りないくらいではないですか。
 青柳 たしかに、これまで以上に広範な視野を持って営業に取り組まなければなりません。しかし私は、社員全員が一丸となって目標に突き進めば必ず実現できる、小さな一歩、蟻の歩みであっても、皆が一体となり力を積み重ねていけば、やがて強大な力が生まれてくると思っています。

誰かひとりでもそのなかで浮き足立てば、とたんに目標達成は難しくなる。だからこそ、営業部門だけがしゃかりきになるのではなく、誰であっても博多座の目標はひとつなのだ、皆がその目標を共有しなければならないのだ、と強く言い続けてきました。全員が一丸となって、初めて博多座は盛り上がっていくのです。

博多座の存在意義と今後

 ―現在のような不況下では、人々はなかなか芝居を見ようという気にはなりません。博多座は福岡の文化拠点ですので、ぜひともさまざまな工夫を講じて、文化の薫りが漂うような素晴らしい場所にしていただきたいですね。
 青柳 福岡の地域により深く根ざして、博多座のファンづくりをしていこうと考えています。その一環として、先日、博多座開場10周年記念とテレビ西日本開局50周年とを合わせて、福岡では24年振りとなる名士劇を行ないました。地元財界人の方々にも大変喜んでいただき、福岡財界と博多座のつながりがより密接になり、ファンづくり、応援団づくりの一環になったのではと考えています。今後も地道な活動、公演を計画していきたいですね。
 ―博多座はキャナルシティとの回遊性も高く、衰退しつつあるシティ劇場や撤退が懸念される劇団四季と上手にリンクできれば、これまでとは違った展開も生まれてくるのではないかと考えています。この地域から日本全国に劇場文化の薫りを発信し、博多座がその牽引役となるべく、ぜひこれからも頑張っていただきたいと切に願っています。

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2011年6月24日 07:00
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