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「若者の自動車・海外旅行離れの本質は購買力不足」から読む、「次は住宅」
特別取材
2009年2月 3日 14:46

 世界は100年に1度という恐慌への瀬戸際まで追い詰められているが、若者の車離れと海外旅行離れはその数年前から指摘されてきた。

 日経BPonlineに池原照雄氏が「若者の自動車・海外旅行離れ、その本質は購買力不足」という題でコラムを書いていた。その中の図表「20~24歳の給与所得者数と人口の推移」を見て愕然とした。
 この統計は国税庁の『民間給与実態統計調査』と総務省の『国勢調査および人口推計』から引用した表であり、給与所得者は1年間を通じて勤務した人数を表している。
 下記の表がそれである。

■「20~24歳の給与所得者数と人口の推移」
(単位:万人、%)
 
給与所得者数
人口
給与所得者の比率%
1985年
379
820
46
1990年
381
880
43
1995年
433
990
44
2000年
320
842
38
2005年
246
735
33
2006年
243
731
33
2007年
250
724
35

 バブル崩壊後、日本企業は3つの過剰(債務、設備、雇用)の解消に奔走した。特に雇用を守るために新卒採用を抑え、「ロストジェネレーション(就職氷河期に社会に出た20代後半から30代前半の層)」を産み出した。この層が実は第一次住宅取得者層になっている。
 しかし、この層の大半は今回の不況で真っ先に切り捨てられようとしている契約社員、派遣社員層と重複しているのである。
 さらにその後の世代を含む20歳から24歳までの人口動態と給与所得者数の比較を示したのが上の表になる。

 この表には正規採用社員だけを対象としたものではなく、1年を通じて勤務した人の数であり、非正規従業員でも就労状況が比較的安定した人も対象となっているものと思われる。
 この層は「ロストジェネレーション」層の次の世代であり、3年ないし7年後に住宅一時取得者層になる世代である。そしてその数(給与所得者)は1995年がピークで、以後2006年まで一貫して落込んできている。給与所得者数が人口に占める割合は1995年は40%強であったが、製造業の現場への派遣労働が解禁された翌年の2005年以降は30%台にまで減少してきている。
 つまり、若者が車を購入したり、海外へ旅行したりするための原資が無いのである。つまり購買力を無くしているのだ。この世代が住宅一次取得者年齢層にさしかかろうとしている。
 車や、旅行どころではない世代に、住宅を購入せよというほうが土台無理な話である。

 もっとも上の表には、一昨年11月以降の、自動車および鉱工業の生産が下降し始めてからの数字は含まれていない。勿論、昨年11月以来、四半期の同生産が対前年比25%から30%と、直下型の下降を示し続けている期間の数字も含まれていない。
 また、住宅の空き家は既に700万戸以上あり、これも間もなく800万戸を超えるであろう。
 この100年に一度あるかないかという経済の直下型地震による津波が、もうそこまで到達しようとしている。こういう環境下で住宅関連企業は如何にして生き残りを賭けるのか?
 新築工事や既存の業態によるだけでは、生き残れないのは確かだ。

 もう一つの資料がある。
 国税庁が企業の年末調整からまとめた「民間企業給与実態調査」という統計資料がそれだ。これを北見式賃金研究所が分析している。それによると…。

(1)2006年の平均年収は、434万円。男性は538万円、女性は271万円である。  
(2)ただし、通常「平均値」は上にぶれる傾向があるので、中間層の平均年収は300万円台である。男性が400万円、女性が200万円台であり、「平均値」を下回るところに、所得者のおよそ60%が分布するという。

(3)年収の平均値は、1998年(平成10年)から2006年(平成18年)まで、過去9年間連続して減り続けている。

(単位:万円)
  (比較) (比較)
1998年
572
 
280
 
2006年
536
―36
271
―9

(4)官民比較で言うと、公務員の年収は毎年上がり続けたので、大きな格差が生じるようになった。最近の中・高級住宅物件の購入者は、医者以外は公務員や教職者等が占める割合が大きくなっている。また、金融機関もこういった層には優先的にローンの設定を行なっている。
 日本の住宅ローンは土地・建物の資産価値を評価するのではなく、勤務先(安定性)と 所得(返済能力)だけで融資判断を行なう。
(5)日本全体でみると、給与所得は2006年(平成18年)に202兆円あり、ピーク時だった 1997年(平成9年)と比較すると9%(184兆円)減っている。
 所得税の税収は2008年(平成18年)に10兆円であったが、これはピーク時の1993年(平成5年)と比較すると19%も減っている。

(6)年齢別に見ると、中高年男性の年収が激減している。

単位:万円
  男50―54 (比較) 男55-60 (比較) 全年齢男性 (比較)
1998年
733 
 

691

 
572
 
2006年
661
―72
633
―58
538
―34

(7)勤続年齢別に見ると、25年以上の中高年男性の年収が激減している。

単位:万円
  男25-29 (比較) 男30-34 (比較) 全勤務年数 (比較)
1998年
790
 
822
 
572
 
2006年
727
―63
776
―46
538
―34

(8)企業規模別では、2006年(平成18年)の時点で、次のような大きな格差がある。

単位:万円
企業規模 30-99人 5,000人以上 全規模
男性 年収
493
738
538
女姓 年収
264
259
271

(9)企業規模別では、過去から次のように推移してきた。規模を問わずに年収は下がってきている。特に5,000人以上の規模の大手において女性の年収が大きく下がっている。

単位:万円
男性 年収 30―99人 (比較) 5,000人以上 (比較) 全規模 (比較)
1998年
526
 
759
 
572
 
2006年
493
―33
738
―21
538
―34
単位:万円
女姓 年収 30-99人 (比較) 5000人以上 (比較) 全規模 (比較)
1998年
273
 
310
 
280
 
2006年
264
―9
259
―51
271
―9

 こうして見てくると、全産業において年収が減少しており、大企業と中小企業での所得格差が大きく開いていることがわかる。
 これに対して中高年層の年収低下率が大きくなってきている。さらに社会保険料の負担増等を筆頭に支出の伸びが大きくなり、可処分所得はますます少なくなっていくことが判る。それに加えて急激な金融危機が襲いかかってきている。
 前にも述べたが、空き家が既に700万戸以上あり、少子高齢化の進展以外に給与所得者数の減少が人口減少のスピードよりも速くなっている。

 したがって、リフォームに注力する必要がある。ただし、リフォームも小さなリフォームではなく先日の『I・B』(No.1406)誌上のトップインタビューで健康住宅の畑中社長が述べておられたように、「住宅の性能を上げるリフォーム事業、性能アップのためにインナーサッシを取り付けることで熱効率が良くなり遮音性能もアップするような提案」をするとか、マンション(戸建てでも)床暖房にすると共に、バリアフリー化してバスルームと廊下等床の段差を無くし、浴室・キッチンの取替え工事からオール電化化する。子供が巣立って行った後の間仕切りを取り払いリビングを広く取り、趣味を活かせるような間取りにして高齢者向けの住宅環境を整えてあげるなどという風に、健康と環境に配慮したリフォーム工事に取組んでいくべきではなかろうか?

 太陽熱発電等も一時期は普及のために政府が補助金を出したことにより、シャープ、京セラ等は世界のトップメーカーにまで上り詰めた。もう少しの期間、もっと高額の補助金を出していたら、メーカーの生産効率がよくなり、コストが下がることによって、普及スピードは更に上がっていた筈である。しかし、中途半端な時期に補助金を打ち切ってしまったために、アッと言う間にドイツに追い越されてしまった。今度復活させるというが、僅かな戻し税をあてがうよりは、こういった環境技術面に2兆円の予算を投入すべきだと思う。

【徳島 盛】

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