福岡市港湾局長　岩瀬　信一郎氏

歴史的にアジアとの窓口であった博多港。グローバル化の中で、その役割に対する期待は一層高まっている。そうした期待に応えるため、福岡市港湾局は港の整備、管理・運営、集客などに取り組んでいる。「博多港の発展なくして福岡市の発展なしという思いです」と語る岩瀬信一郎港湾局長（肩書きはインタビュー当時）に博多港の現状と課題、九州・アジア新時代の交流拠点都市づくりの中での役割などについて伺った。

メインの仕事は港の整備、集客など

　――福岡市が博多港の管理者になった1952年以来、港湾局が果たしてきた役割についてお聞かせください。
岩瀬　
博多港は、福岡都市圏の市民生活に必要な食料、石油製品、建築資材などの物資を運び入れる港、市民生活を支える港でもあり、福岡市の背後にあるメーカーの製品を輸出する港、西日本の産業を支える港でもあります。そういう博多港の整備、物流面の管理・運営を行なってきました。
　また、博多・釜山間のフェリーや高速旅客船の誘致に努力しましたし、昨年は23回寄港した中国発着のクルーズ船の誘致にも取り組んでいます。
　シーサイドももち、西福岡マリナタウンといった新しいまちづくりもやっていますし、市営渡船を運航して、志賀島、玄界島、小呂島、能古島の皆さんの生活の足の確保にも取り組んでいます。災害対策としての高潮対策や人工海浜や遊歩道といった海岸整備もやっています。
　一番大きいのは、やはり港湾施設の整備、管理・運営ですね。そして、利用してくださるお客さまを集めることが、港湾局のメインの仕事です。

博多港はアジアとの人流の窓口

　――九州・アジア新時代の交流拠点都市づくりを推進していく上で、博多港が果たす役割についてはどのようにお考えですか。
岩瀬　
これまで福岡市は、アジアの交流拠点都市づくりに向けて、人、モノ、情報が集まるまちを目指してきました。人、モノ、情報を集めるためには、通信手段も必要でしょうし、移動手段としての空港、港湾、道路、鉄道等も必要ですが、そのうちの一つとして港は重要な窓口です。
昨年の博多・釜山間のフェリーや高速旅客船、中国発着のクルーズ船などの乗降人員は84万5,000人で、外国航路船舶乗降人員数は93年以来連続で日本一です。2位が下関の24万人ぐらいですから、ダントツなんですよ。空港の国際線旅客者数と比較しても、成田、関空、中部、福岡、羽田の各空港に続いて、博多港は６番目です。
　去年秋のアメリカ発金融危機でウォンが安くなり、釜山からのお客さまは減っていますが、日本から出国のお客さまは増えています。トータルで見れば減少気味ですが、それを補う形で中国発着のクルーズ船が来ており、昨年は乗降客人員が一昨年よりわずかながら増えました。今後の需要がどうなるかといえば、短期的には厳しいかもしれませんが、中・長期的には伸びていくと思います。例えば、ことしは中国発着のクルーズ船が33隻予定されており、去年の23隻より10隻ほど増えます。そういう意味では、まだまだ増えていくので、クルーズ船の誘致にも力を入れていきたいと思っています。
　2011年春に九州新幹線が博多まで来ますし、同じ時期にＫＴＸ（韓国高速鉄道）が釜山まで来ます。そうすると、それぞれの鉄道とフェリー、高速旅客船をつなぐことによって、ソウルから鹿児島までスムーズに行ける時代になります。それに合わせて、海の玄関である中央ふ頭の整備をしなくてはいけないと思っています。
　また、昨年7月に観光圏整備法が施行され、観光圏の一つである阿蘇くじゅう地域では観光促進を博多港と連携して実施するという計画がありますので、阿蘇くじゅう地域と結ぶルートの確立、博多港国際ターミナルでの観光地のＰＲなどをやっていきたいと思っています。
　20～30年後の博多港はどうあるべきかという「博多港長期構想」の策定に向け、有識者に入ってもらって検討委員会で議論していただいています。その検討の中で、九州・アジア新時代に博多港が果たすべき役割については「アジアとの新たな交流の時代にアジアと九州、わが国をつなぎ、来訪者に福岡を知ってもらう、海の観光・交流ゲートウェイづくりを進めるべきだ」という提案を頂いています。この長期構想は09年度中から10年度にかけて取りまとめていただく予定ですが、今後アジアとの交流をどうするのかという構想についても検討していただきたいと思っています。