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特別取材

アトピー性皮膚炎と闘う男の手記(20)
特別取材
2009年5月25日 08:00

終りに

 アトピー性皮膚炎の原因は、さまざまに指摘されています。しかし、確たる理論の形成に至っていないのが現状です。今、もっとも多く指摘されているのが遺伝的素因ですが、「だからどうなの?」と言われると、それまでのような気がします。「遺伝が原因だから、お父さんとお母さんが悪いんだ!」と叫んだところでアトピーはよくなりませんし、周囲を不快にさせるだけです。より前向きに考えるのであれば、アトピーを持ちつつ、より快適に暮らすにはどうすればよいのか、という点に絞ることが肝要だと思います。小児アトピーの場合は、少しでも早く抑えること。成人型アトピーの場合は、長く付き合う覚悟を決めて、根治ではなく軽減、コントロールすることを目指すのが大切ではないか、と私は思います。
 薬、食品、生活習慣、いずれも手段であり、目的ではありません。目的は「よりよい生活が送れるようになること」。この一点です。今、何ができ、何ができないのか。これを冷静に判断し、できないことができるようになるためには何をするのが有効かという見極め、そのための試行錯誤を患者の皆様には続けてほしいと思います。
 そもそも、アトピーは病気ではありません。免疫機能に特徴があり、皮膚のバリア機能が弱いという身体の設計上の不具合がアトピーと呼ばれているだけです。鼻が高い、背が低い、髪にくせがある、これらと同じように身体的な特徴にすぎません。したがって、根治させるという考え方自体が間違っているのだと思います。
 もっと哲学的に言うなら、自分の体の支配者は誰か、ということになるのかもしれません。自分の心が不快に思っていることも、体は快適に思っているのかもしれません。皮膚のバリアの低下を補うための免疫機構は正しく働いており、その結果、心に不快の念が生じる。どの細胞も正常に働いている。正常に働いているがゆえに不快に感じるというのは大きなジレンマです。このジレンマ、心と体の方向性の違いがアトピーの正体と言うことができると思います。
 私も完全に体調のコントロールができているわけではありません。時には症状が悪化しますし、日々満足できる状態が続くわけでもありません。ですが、毎日少しでもよい生活が送れるようにと工夫を重ねています。アトピーをひっくるめて自分であるという認識、ここに至ることができるなら、随分と楽だろうと思うのですが、残念ながら私はまだ至っておりません。ですから、日々克服するための工夫を重ねているのです。いつか、「私も元アトピーだったんだよ」と言える日が来ることを夢見つつ、さらに皆様の生活がよりよくなることを祈りつつ本稿を締めさせていただきます。何らかの助けになれたのであれば幸いです。

(了)

【柳 茂嘉】

(プロフィール)
柳 茂嘉(やなぎ しげよし)
1975年生まれ。山口大学経済学部卒業。データ・マックス編集部記者を経て、現在フリーライターとして活動中。幼少期よりアトピーを患い、脱ステロイドなどの過酷な治療も経験。より完全な症状コントロールを目指し、体質改善策を模索し続けている。

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