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特別取材

(株)幻冬舎 代表取締役社長 見城 徹 氏 「熱狂」(2)
特別取材
2009年8月12日 08:05

今、何かに熱狂して生きていかなければ、
生きていくことが虚しくてしょうがない。

 ―立ち上げ当初、経営に対するイメージは何かお持ちでしたか。
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 見城 16年前に僕が幻冬舎を立ち上げたときに、うまくいくなんて思ったヤツは誰もいなかった。しかし9年目には上場し、16年目の今もちゃんと存在しているわけです。前期(2009年3月期)は横領事件などがあって特損を出さなきゃいけなかったので、決算に関しては例年より悪くなっているけれども、基本的には毎期18~24億円の経常利益の会社なんです。
 立ち上げのときに最初にイメージしたのは、社員1人あたりの売上が2億円で経常利益25%。これを何としても毎期毎期、実現していきたいと思っていました。だから、人を採るのがすごく怖かったんです。慎重になった。なぜならば、1人雇うと2億円の売上と5,000万円の経常利益を増やさなきゃいけない。僕はそういうイメージを持った。そんな会社なかなか存在しないけれども、それを何とか実現しよう、と。

 ―高い目標設定ですね。

 見城 最初のうちは実現できていたんだ。1人2億の25%、ある期なんか経常利益30%を超えたこともあった。でも、会社を大きくしていくに従って管理部門も増えてくるから、なかなかそうはいかなくなるけれど、最初に掲げた1人2億、経常利益25%というのは崩したくない。ここのところずっと崩れてはいるけれど、最初の4、5年はそれができたんだよね。大きくなるに従ってそれはどんどん下回ってくるけれど、自分としてはそれにもう一回戻したいという思いはあるんです。でも、ニッチなところをやらずに、ガチンコ勝負で大手出版社と同じことをやって、力で捻じ伏せて勝つ、と思ってやってきているから、イニシャルの投資も必要なんだよね。
 『GOETHE』は、初年度と2年目は黒字で、3年目の今年は広告不況もあって、まだわからないけれど、たぶん赤字になると思う。『GINGER』も最初は当然、結構な赤字ですよ。でも、総合出版社としてもっともっと成長していくためには、こういうことをやらなければいけない。だから1人2億の経常利益率25%、っていうのはどんどん遠くなるけれど、最後はもう一度、全部基盤ができたあとに、そこに戻したいと思っています。  僕ももう58歳だし、ある日、自分の寿命を70歳と勝手に決めてしまったんです。決めないと「今何をすべきか」ということが鮮明にならないじゃないですか。だからあと12年ですよ。あと12回の正月、あと12回のサマー・ヴァカンス、ゴールデンウィーク、花見…と考える。12年×365日の晩飯。今日の晩飯もその1回。そうすると、何ひとつ疎かにできない。
 16年前に幻冬舎を立ち上げたときには「絶対に大手出版社に伍してやる」と思っていた。でも、周りのみんなは、すぐに終わると思った。新しくできた出版社のほとんどがそうなっている。だけど、僕はここまでできた。誰もできると思っていなかったものが、今現実にあるわけだよ。これは一種の奇蹟ですよ。幻冬舎の今ある姿は、自分で言うのも変だけど、出版界の奇蹟に近い。確かにそうだろうと思う。  
 『ダ・ヴィンチ』(メディアファクトリー刊)の、読書好きの2万人の調査が毎年末に発表されるんだけど、ここ4年間は出版社人気ランキング3位。1位が講談社、2位が新潮社、3位が幻冬舎で、集英社、角川書店と続く。創立して12年目ぐらいから3位。そんな会社ないだろう? だけどそれは『人気度』であって、今、「日本で一番の出版社はどこか」と訊いたら、多くの人は集英社とか小学館とか講談社って言うと思うんだ。だから僕は、あと12年で講談社や小学館や集英社を抜きたいんですよ。
 そんなの無理だということは、自分でもわかってる。そりゃあ無理でしょう。あちらは100年からの歴史をもってやってるわけだし、出版がすごく好調だった時代の資産もいっぱいある。幻冬舎は、出版がすでに斜陽産業といわれていたときに出発したわけだから、持っている財源が違いますよ。だけど僕は、あと12年でそういう大手を抜く、という思いでやってないと今が生きられないんです。  実際に70歳になったときには抜いていないかもしれない。だけどもしかしたら、という思いがある。16年前に、今の幻冬舎を想像できた人は誰ひとりいないんだから。それが何万分の一の奇蹟だとしてもね。  本当に抜いていて、また「奇蹟だ」と言われれば嬉しいし、仮に抜けていなかったとしても、僕は今、何かに熱狂して生きていかなければ、生きていくことが虚しくてしょうがないんだ。

~つづく~

【取材・文・構成:烏丸 哲人】


見城 徹 (けんじょう・とおる) 氏

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1950年12月29日、静岡県清水市(現・静岡市清水区)生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、75年に株式会社角川書店入社。『野性時代』副編集長を経て、85年に『月刊カドカワ』編集長。直木賞作品5本を含め、数多くのベストセラー作品を送り出す。93年、同社取締役編集部長を最後に退社。同年11月13日、株式会社幻冬舎を設立。『弟』(石原慎太郎)、『大河の一滴』(五木寛之)、『ダディ』(郷ひろみ)などのミリオンセラー作品を自ら担当編集者として手がけ、経営者でありながら、今なお編集・宣伝・営業の第一線に立つ。とくにその斬新な広告やプロモーションは、業界の常識を変えたと評される。一方、映画やテレビドラマの企画・プロデューサーとしても活躍、その動向は各界の注目を浴びている。

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