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特別取材

福岡アジア経済特区構想がもたらす 九州、日本への影響とは(上)
特別取材
2010年12月20日 15:21

九州大学ビジネススクール 経済学研究院副研究員長 教授 村藤 功 氏

 「支店経済」と言われる九州・福岡は、全国GDPのなかで約10%のシェアを有しているものの、その発言力については数字ほどもないのが実情である。そうしたなかで、地理的に近いアジアのなかで存在感を増していくことが、生き残り、成長戦略の鍵であるとする、九州大学ビジネススクール経済学研究院副研究員長の村藤功教授に、福岡アジア特区構想についてお話をうかがった。

(聞き手:(株)ディー・エムサービス コンサル部長 柳 憲一郎)

<アジアの成長を取り込む>

 ―今の日本では、政局の不安があったり、中国や北朝鮮等を含めた地政学的リスクを抱えたまま2010年が終わろうとしています。このような状況のなかで、九州が今抱える問題点をどうお考えになりますか。

九州大学ビジネススクール 経済学研究院副研究員長 教授 村藤 功 氏 村藤 九州は支店経済と言われ、国内のGDPの10%を占めると言われていますが、果たして日本国内で、九州が10%分の意思決定を行なっているのかというと、そのようなことはありません。九州はアジアの成長の取り込みをはじめとして自分で自分の進むべき道を考え、実行していくべきだと思います。
 今までの九州、とくに福岡内の大手企業は、九州での居心地の良さに安住していたと思います。それは一般企業のみならず、福岡銀行や西日本シティ銀行などの金融界にもあると思います。今までどおり、預金貸付業務だけをやるのではなくて、アジア域内でのリサーチやアドバイザリー、デリバティブのリスク管理支援などの業務を行なってほしいです。
 九州の企業で中国やアジアへ進出している、または考えているところはたくさんあるわけです。そうした企業群のサポートとして、現地に駐在員事務所ではなく支店を構えてほしい。不良債権処理が一段落し、自己資本比率が国際銀行として必要な8%を回復した今こそ、国際銀行に向けた姿勢を見せるべきだと思います。とくに福岡銀行(以下、福銀)、西日本シティ銀行(以下、西銀)ですね。これを「スーパーリージョナルバンク構想」と呼んでいます。
 金融ビッグバンが行なわれ、都銀も地銀も独自路線を歩むことが可能になっているにも関わらず、いまだに域内での預貸業務のみに捉われている地方銀行は、自分で自分を地銀だから、と活動範囲を狭めています。まずは中国の大連や青島、黄海沿岸都市に支店を開設してリサーチを行ない、進出する企業に対して融資のみならず、アドバイスや為替リスク・金利リスク管理支援を行なう必要があります。
 しかし、そうは言っても、対象となる顧客が少ないという問題があります。先ほども申し上げましたが、九州は支店経済ですので、企業の意思決定というのはほとんどが東京などの大都市でなされ、アジア進出しようにも決定権がないのが実情です。
 では、九州内で顧客を増やすにはどうすれば良いのか。今まで企業がアジアで事業を行なうための持ち株会社を置く場所として挙げられていたのが、シンガポール、香港、上海です。そこに企業戦略の長期的な視点を取り入れ、福岡をこのグループのなかに位置づけ、企業のアジア戦略の持ち株会社を福岡に置いてもらうことにより、顧客の数という問題は解決を見ることができると思います。
 そのためには、企業が魅力的だと感じる諸要件が必要だと思いますが、現在話し合われている福岡アジア特区構想のなかで、明確なメリットをアジアに進出する日本企業に対して提供することが必要です。たとえば法人税を10%引き下げたり、福岡アジアホールディングス傘下のアジア事業会社で働く従業員は1回ビザを取れば域内を自由に行き来できる、といったことです。
 福岡は日本国内なので、知的財産権の保護も国内法のもとに行なわれ、ブラックボックスを維持できるというメリットもあります。大企業のアジア持株会社を福岡に誘致して、アドバイザリー業務やリスク管理支援業務の顧客を増やし、九州は国内ゼロ成長とアジア10%成長の間の長期5%成長を目指すべきだと思います。地方の総合特区構想には予算を付けないという話が先程の事業仕分けで出ています。
 しかし、具体的なアイデアを先に出せと言われているだけなので、福岡アジア特区構想の実現に向けて予算がなくてもできる規制緩和や、地銀のスーパーリージョナルバンク化などは行なっていくべきだと思います。事業仕分けで総合特区が否定されたと考えて、いささかトーンダウンした感がありますが、そのように考える必要はないのです。

(つづく)

【文・構成:神田 将秀】


<講師プロフィール>
村藤 功(むらふじ いさお)村藤 功(むらふじ いさお)
東大法卒、ロンドン・ビジネス・スクールMBA。ベイン、メロン銀行、CSファースト・ボストン、ペレグリンを経て、アンダーセンのパートナーへ。エンロン問題で、アンダーセンが崩壊してのち、ベリングポイント顧問を経てプライスウォーターハウスクーパースコンサルタントで2009年末まで顧問。03年4月から開設された九州大学のビジネススクールで企業財務、M&A、プロジェクト演習と国際連携担当教授。07年から中国の東北大学(瀋陽)客員教授。09年4月から産業マネジメント専攻長兼経済学研究院副研究院長。10年7月から(株)産学連携機構九州非常勤取締役。

<社会活動>
経済産業省主催の地域金融人材育成システム開発委員会(2003)と財務管理人材育成システム開発委員会(2004)の委員長。03~09年まで経済同友会会員。キンザイ・CFO協会:CFOプロフェッショナル検定企画・試験委員、銀行研修社:中堅中小企業CFO講座、金融検定協会、財務マネジメント部会委員。熱海市行財政改革会議委員。久留米市ガス事業譲渡先選定委員会・事業仕分委員会委員。行政刷新会議第2ワーキンググループ仕分人。糸島市行革推進委員会委員。大前研一氏主催のスカパーのビジネス・ブレークスルー・チャンネル(ch.757)で数番組放映後、コンテンツ委員会委員。06年KBC、07年からクロスFMのラジオ番組BBIQモーニングビジネススクールで金曜日の財務担当。

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