ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

経済小説

トリアス久山物語『夢の始終』(43)~『夢』の終わり
経済小説
2011年10月 7日 07:00

<『夢』の終わり・株式会社トリアスのいま>
 立場が変わり、PMとしてファンドにリーシングの成果を報告する役割となったわけだが、ホークスタウンの場合はここで危機を自覚することができた。

 このため、ホテルやドームで法人営業をしてきた有力な人材を、ホークスタウンのテナントリーシングに投入した。ダイエーがリクルート株を保有していた時代に、ホークスタウンは、リクルートの有能な営業マンを何人も受け入れていた。これらの人材を軸に、ホークスタウンではダイエー出身者、プロパー社員を含めた強力な法人営業チームを組織していた。これらのチームはもっぱらドームの看板や年間予約席を打ってきたのだが、この戦力をリーシングに転用したのだ。

 しかし、それでも成果が上がらない。やはりテナントリーシングには、流通業界での幅広いネットワークが不可欠である。そのようなネットワークを持つ人材を、単一のショッピングセンターが高給で抱えるのには無理があった。

 そこで株式会社ホークスタウンは究極の一手を繰り出した。

 ホークスタウンモールのPMを、ショッピングセンター専門の運営会社に委託してしまった。そしてそのままでは、自社に抱えていたホークスタウンモールの現場要員が余剰となってしまうので、これら現場要員を、当該専門会社にまとめて出向させてしまったのである。そうして、リーシングのネットワークについては当該専門会社に期待することにしたわけである。

 一方、トリアスのプロパティマネジャーである株式会社トリアスには、このような決断ができなかった。

 ショッピングセンターとしてのトリアスは、ラサールインベストメントの手により売上・客数とも大きく上昇に転じた。ショッピングセンターとしての価値も大きく上がるだろう。
 が、それはPM会社としての株式会社トリアスの成果ではなく、ファンドであるラサールの主導で行なわれたことだった。
 トリアスがラサールの手に移って以降、新ゾーンのオープンなどのニュースリリースもすべてラサールからなされた。こうなるともはや、PM会社に存在意義はない。ショッピングセンターの金銭管理・施設管理と広報宣伝を請け負わせるだけなら、他に得意な企業がある。

 そして、2011年に入り株式会社トリアスは、ついに人知れず静かにPM契約を解除された。

 その後を担ったのは、大阪本社でショッピングセンターの運営を主業務とする株式会社ケイファである。
 このことについて、株式会社トリアスからもラサールインベストメントからも何ら発表はなされていない。株式会社トリアスの事務所も、トリアスの事務棟から退去し、がらんどうとなった。株式会社トリアスの名称はショッピングセンター・トリアスのホームページから削除され、会社ホームページも消滅して現在に至っている。

(つづく)

【石川 健一】

≪ (42)  | (44) ≫

<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)

東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


※記事へのご意見はこちら


※記事へのご意見はこちら

経済小説一覧
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル