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"一行たり"とも掲載することはできない!~「タブーの正体!」 川端幹人著(ちくま新書)
書評・レビュー
2012年5月 7日 14:00

 著者は雑誌『噂の真相』の編集部に22年間在籍し、副編集長として、紙面を統括、辣腕を奮った人物である。

 『噂の真相』は、総合月刊誌の中で、『文藝春秋』につぐ売れ行きを誇り、経営状態も良好であった最中、2004年4月号で突然休刊となる。それは何故か。この本の中に、その赤裸々な事実が書かれている。

 「タブー」とは、本来は文化人類学や宗教学で共同体の触れてはならない領域、犯してはいけない行為を意味する学術用語である。そして、「マスコミのタブー」とは、普段は威勢のいいテレビ、新聞、週刊誌がある特定の報道対象、領域を前にした途端、凍りついたように沈黙し、一切の批判を放棄してしまうことを意味する。

 昨今、3.11以降、「福島原発事故」に関連して、この「マスコミのタブー」という言葉を聞くことが多くなった。この本では、「暴力の恐怖」、「権力の恐怖」、「経済の恐怖」の3つに分けて説かれている。

 著者が連載中の朝日新聞社の月刊誌でユダヤ人団体SWC(サイモン・ヴィーゼンタール・センター)に触れた記事を入稿した時のことだ。その差別や陰謀論のかけらもない原稿に関して編集長から電話があった。「SWCに関する記述を全て削除してほしい」、「とにかく、SWCに関しては、一行たりとも掲載できない」と論説委員も経験した編集長は繰り返すだけだった。

 相撲の曙対貴乃花戦で、曙が四つを組んで勝った時のことだ。ある新聞のスポーツ面で、押しの相撲を得意とする曙が四つに組んでも勝ちそうだというので、「四つも曙」とタイトルをつけたところ、整理部が「四つはまずい」として「組んでも曙」に変えてしまった。

 司法記者クラブのある記者は「検察のスキャンダルなんてやったら5年は干される」と真顔でその怯えを告白した。司法記者クラブの記者はエリートで、将来、社会部の要職につくことが多い。その結果、新聞・テレビは会社全体が検察絶対主義に覆われていく。

 東電が、テレビや新聞の経済部記者を接待漬けにしている話は有名だ。こともあろうに、警視庁広報部が、新聞やテレビ、週刊誌の編集長、デスク、記者を、頻繁に料亭、ゴルフに接待をしている。これは明らかな税金の濫用である。

 2000年以降、急激に収益を悪化させたテレビ・新聞メディアは、もはや「報道の自由」や「知る権利」に拘る余裕は全くない。

【三好 老師】
 

<プロフィール>
三好 老師 (みよしろうし)
 ジャーナリスト、コラムニスト。専門は、社会人教育、学校教育問題。日中文化にも造詣が深く、在日中国人のキャリア事情に精通。日中の新聞、雑誌に執筆、講演、座談会などマルチに活動中。



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