＜老いてもなお高みを目指して羽ばたける＞
　さて武野社長が思いを伝えたい『後輩』は、若者だけではない。

　武野社長の経営者人生は、修行に入った椅子の張替え店の親方が突然亡くなってしまったことから始まった。しかし、人がやらないような経営に着手することで、次々と事業を広げていった。逆境を打破するためには逆転の発想だと知った。社会とは、決して学校で学ぶように、１＋１が２になるような世界ではないと実感して、面白くてたまらなくなった。失意のどん底からどんでん返しが生じるような、非凡な展開を数多く経験した。
　ここでも多くの人に支えてもらった。「武野さんのためなら一肌脱ごう」という言葉のありがたさをかみ締めてきた。そして、皆が挫折をした中国への企業進出にも成功し、昔であれば社会からの引退を意識する時期を迎えたとき、「老人でも健康であれば、今までの経験を活かして翔ばたける」という思いがふつふつと湧いた。

　日頃からふとした折に俳句や小文などを書き溜めていた武野社長は、この思いを『老健践翔』という四字熟語にまとめた。この言葉は、キヤノンが全国の2,500社を超える経営者の座右の銘を集めて１冊にまとめた新聞広告シリーズ『社長、曰く』という本でも紹介された。これから高齢者と呼ばれる世代が多くなってゆく日本にあって、勇気を与えてくれる言葉だ、と励みに思った読者もいたことだろう。

　若手社員に対して、逞しく人生を開拓してほしいと思うのと同様に、高齢の社員に対しても、もっと自信を持って、さらに高みを目指してほしいと思う。長年、仕事をともにしてきた信頼のおける社員たちが、定年を前に元気を失っていく姿を見れば、これもまた若者たちを鼓舞するがごとく、まだまだ社会に出てどんどんと力を発揮してほしいと思う。健康なうちは、経験から培ったものを活かして、いかようにも翔ばたけるのだから、と。だから、仕事の機会はどんどん与える。「人が避けて通る未踏の地に足を踏み入れよ」、という生き方は、ここにも受け継がれている。

　今まで、人に迷惑をかけない、後ろ指をさされるようなことはしない、ということをモットーに前進し続けてきた。かつて経営で困難に陥るたびに、経営者自ら現場に出て泥土にまみれて仕事をした。今も社長でありながら、社員と一緒に営業先を回る。経営者としての不安に悩む夜には、１人、イスのデザインを描いてみる。ふと思うときがある。「自分は経営者に向くのか」と。しかし片時も仕事のことを忘れたことがない。仕事が好きなのだなあ、と思う。そして、社員をはじめ今まで仕事を支えてくださった方への縁に感謝する。それは、経営者が決して忘れてはならない大切な真の心ではないだろうか。

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＜COMPANY INFORMATION＞
■（株）アダル
代　表：武野　重美
所在地：福岡市博多区金の隈3-13-2
設　立：1968年４月
資本金：１億8,225万円
ＴＥＬ：092-504-4141
ＵＲＬ：http://www.adal.co.jp/

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