「家電量販店は3社に再編される」。ヤマダ電機の山田昇会長(69)が、ことあるごとに口にする業界見通しである。インターネットを中心とした通販市場が拡大し、消費者が店頭で家電製品を購入しなくなるという危機感が根底にある。ヤマダのライバルはもはや同業者ではない。台頭してきたネット通販、なかんずく「最大の敵は、米アマゾンにあり」だ。世界最大の家電チェーン、米ベスト・バイがアマゾンに完膚なきまでに打ち負かされた姿が、山田会長の脳裏に焼きついているからである。
<アマゾンに敗れた全米最大の家電チェーン>
米家電量販店最大手のベスト・バイの失速が明らかになったのは昨年3月末だった。2011年12月~12年2月の四半期決算で、ベスト・バイは17億ドル(約1,360億円=1ドル80円で換算〉の純損失を計上。通期でも12億ドル(約960億円)の赤字に転落した。
ベスト・バイの設立は1966年、リチャード・シュルツ氏がオーディオ機器専門店を開いたことに始まる。87年にニューヨーク証券取引所に上場。01年、売上高でサーキット・シティー・ストアーズを抜き、家電量販店の全米一の座を獲得した。米経済誌フォーチュンが選定した優良企業「フォーチュン100」に選ばれたこともある。ライバルのサーキット・シティー・ストアーズが08年に経営が破綻。ベスト・バイは家電量販店の覇者として君臨したかに見えた。しかし、消費環境は大きく変化した。
ベスト・バイを打ち負かしたのは、アマゾン・ドット・コムなどのネット通販の広がりだ。書籍の通販からスタートしたアマゾンは、04年当時、米国家電売上高で上位10社に入らない圏外だったが、10年には4位まで大躍進した。
アマゾンが家電通販進出の武器にしたのが低価格である。アマゾン価格はベスト・バイより平均で4.2%安いといわれている。アマゾンに価格競争で敗れたベスト・バイは米国の大型店50店舗を閉鎖、カナダの大型店15店も閉鎖した。創業者のシュルツ氏はファンドの手を借りて同社を非公開化しようとするまでに追い込まれた。
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