2024年04月24日( 水 )

耐力偽装を告発した「元・一級建築士からの警告」(全文)(6)

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 鉄筋コンクリート造(RC造)の建物の構造設計で必要な部材や鉄筋量を減らす耐力偽装が行われていたと告発した元・一級建築士の仲盛昭二氏の警告書の全文を紹介する。

総括

 熊本地震により被害を受けた建物についても、この告発内容と同様の構造計算の偽装が行われていた事は、今回行った構造再検証により、ほぼ間違いありません。
 横浜の傾斜したマンションでも、杭の先端が支持層に到達してなかった欠陥以外に、構造スリットが図面通りに施工されていなかった事が発覚しました。傾斜が発覚して間もなく、販売主の三井不動産レジデンシャルが、早々と「建替え」を表明した裏には、「構造スリットの手抜き」という欠陥が隠れていたのです。構造スリットの問題は、今後、熊本でも大きな問題になる事は確実であり、その他全国のマンション等でも、センセーショナルな問題として取り上げられるになると思われます。
 福岡市内でも、スーパーゼネコンT社の設計・施工による建物が傾斜している事が発覚しています。これについては、まだ、ゼネコンへの追求が行われていないので、ゼネコン側に認識は無いと思われます。
 6月16日、北海道函館で、震度6弱の地震が発生しました。近年、規模の大きい地震が全国的に頻発しています。明らかに、我が国の地震周期が、過去の状態と異なる時期に入ったと思われます。我が国の建築業界は、設計者も施工業者も行政までもが、これらの建築構造設計に関わる様々な問題点を隠して、建築主やユーザーを裏切り続けてきた背景には、「建物の耐用年数の間に大地震は発生しないだろう」という、根拠のない安易な思い込みがあったのではないでしょうか?
 今、対策を講じなければ、多くの国民が、いつの日か発生する巨大地震による甚大な被害を回避できません。建物の構造設計に長期に亘り関わってきた私が、建築業界を去るにあたり、構造専門家以外には知り得ない構造設計や施工上の問題点を、広く国民の皆様に知らせておくべきではないかと考え、警告に踏み切ったものです。

(了)

▼関連リンク
・耐力偽装、建築界に蔓延か?部材や鉄筋量を減らす操作~元・一級建築士からの警告
・部材や鉄筋量を減らす耐力偽装、警告の元・一級建築士に聞く(前)

 
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