2024年03月29日( 金 )

朝令暮改か臨機応変か Jリーグ来季より1ステージ制に復帰

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 サッカーJリーグは4日に行われた実行委員会で、来シーズンから現行の2ステージ制・チャンピオンシップ(以下CS)による優勝決定制度を改め、1ステージ制を採用することを内定した。現行2ステージ制は、2015年、16年の2シーズンで幕を下ろすことになる。高収益が見込める優勝決定戦の開催で放映権料の拡大などを目指したJリーグだが、イギリスの映像配信企業パフォーム・グループと10年2,100億円の大型放送権契約を結んだことで、本来の1ステージ制に復することになった。

資金難で「変化球」2ステージ制を採用

stadium Jリーグは1993年の開幕当初、2ステージ制を採用していた。当時はバブルと言われたほどのJリーグブームもあり、優勝決定戦のCSも大いに盛り上がった試合も多かった。しかし本場欧州のサッカーリーグはほとんどが1シーズン制。CSにあたる試合はなく、年間勝ち点だけで順位を決定している。「一発勝負で優勝を決めるCSはサッカーの性質にそぐわない」という意見も強く、Jリーグも2005年から1ステージ制に移行した。

 しかし06年のドイツW杯での予選リーグ敗退以降、Jリーグ人気は大きく傾き、国内の経済環境悪化が拍車をかける形で各クラブの経営状態も厳しさを増していく。

 そこでJリーグが打ち出したのが、2シーズン制・CSの再導入である。旧来の2シーズン制でも優勝決定戦にあたるCSは観客動員・テレビ視聴率も高く、独自にスポンサーをつけることも可能だった。旧2シーズン制ではサントリーが冠スポンサーを務めていた。2シーズン制の導入には各クラブから反対意見も出たが、最終的には15年からの導入が決定した。CSのスポンサーには、Jリーグのレギュラーシーズンのスポンサーである明治安田生命が就いた。

 15年シーズンのCSは、年間勝ち点1位・セカンドシーズン1位のサンフレッチェ広島が優勝。試合はいずれも熱戦で観客や視聴者の満足度は高かったが、肝心のチケット販売では出場チームと試合会場がシーズン最終節まで決まらず、販売期間がわずか2日間しかなかったために空席が目立つ試合もあった。

海外大型資本参入で、「本来の形」に戻るJリーグ

 CSへの出場条件や試合形式がわかりにくい、スケジュールが厳しく選手への負担が大きいなど、ファンやクラブからも不満の声が上がっていた現行CSだが、大口スポンサーが登場したため改革途上で姿を消すことになる。

 イギリスのパフォーム・グループは月額1,750円で海外サッカー、MLB・MBAなどのアメリカンスポーツ、バレーボールVリーグ、ラグビートップリーグ、テニスATPワールドツアーなど数多くのスポーツ中継を楽しめるネット配信サービス「DAZN(ダ・ゾーン)」を8月23日から立ち上げしている。Jリーグは16年7月、17年からの10年間J1、J2、J3と関連するCS、昇格プレイオフをダ・ゾーンで試合中継を行う契約を交わした。

 これまで国内の地上波テレビ、BS放送、CS放送のスカパーでバラバラに中継されていたJリーグの試合を、すべてダ・ゾーンで観ることができるようになる。しかも、いびつな形だった2シーズン制・CSをやめ1シーズン制に戻すことで、順位決定も年間勝ち点だけで決まるわかりやすい形に収まった。

 ファンの間からは「つい数年前に決めたばかりの2シーズン制をもう捨てるのか」という声はあまり見受けられない。それだけ1シーズン制が強く望まれていたことがわかるだろう。Jリーグが緊急避難としての2シーズン・CS制をいさぎよく引き下げ、1シーズン制に復した決断は高く評価したい。またこれにともなって、リーグ戦の賞金や均等分配金の大幅増額、降格クラブへの救済金創設、外国人選手枠の緩和も決定された。日刊スポーツの報道によれば、J1優勝で18億円(賞金と傾斜配分金の合計)、J1均等配分金は3億5,000万円が提案されているという。J1優勝チームには最大21億5,000万円が支給される計算だ。懐に余裕ができたJリーグと各クラブがよりクオリティの高い試合を実現し、またアジアチャンピオンズリーグでの躍進や日本代表の強化にもつながることを望みたい。

【深水 央】

 

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