2024年04月19日( 金 )

福岡を拠点に本物の「マーケティング」を提供するグローバルカンパニーを目指す(後)

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アンダス(株) 代表取締役社長 前田 哲郎 氏

 戦略的Webマーケティングと通販向けオリジナル販促ツールを提供し、統合型の通販事業支援企業として業界をリードするアンダス(株)。福岡を拠点にマーケティングを通じたグローバルカンパニーを目指すとしている同社代表取締役の前田哲郎氏に、経営姿勢、人材育成、地域密着、通販、Web業界の現状・展望について語っていただいた。

日本企業にはマーケティング思考がない

 ――マーケティングの分野だと、ビッグデータやAIの活用の話が出てくると思いますが、そこについてはどうお考えでしょうか。

アンダス(株) 前田 哲郎 代表取締役社長

 前田社長(以下、前田) これからのマーケティングを語るうえで、これらのテクノロジーは絶対に外せません。弊社ではデータアーキテクトユニットというセクションを昨年4月に立ち上げました。どういうところで我々が関わっていくのかというところを模索するうえで、各企業はまず、ビッグデータを一元管理する器を作って、そこにデータを溜めるという環境整備から始めていることがわかっています。とくに取り組んでいるのはユーザーインサイト(※5)で、顧客データとビッグデータ、とくにサードパーティーのメディアが持っているCookieデータです。これがいま日本の場合、規制でデータの売買がやりにくいところがありますが、今後、個人情報に関する法改正によって、データ売買がしやすくなると思います。そうなると顧客データとサードパーティーのデータを紐付けることができ、ユーザーがネット上でどういう動きをしているのかがわかるようになります。ロイヤルカスタマーに共通した動き方や見ているメディア、滞在時間などがわかり、インサイトが可視化できるようになります。この部分のノウハウを追求していくことを、弊社の強みとしていこうと考えています。

 ――Webマーケティングにおける現状の問題点について教えてください。

 前田 たくさんありますが、1つに集約すると、「人」ですね。日本の企業にはCMO(最高広報責任者)が不在だといわれますが、そもそも日本企業にマーケティング思考がないことが問題だと思いますね。経営者が旧態依然とした、卸やルートセールスのような人海戦術の営業スタイルの発想しかなく、どうしてもマーケティングという視点が乏しい点が一番問題だと思っています。どの企業にも営業部長はいますが、マーケティングを知らないことが多いです。また、それを育む土壌や教育機関がないということに危機感を感じています。そのために昨年10月に弊社グループのクリエイティブセンター福岡(株)で人材育成事業を立ち上げ、マーケッタ―とプランナーの育成に乗り出しました。福岡大学の先生たちも危機感を持ってくれて、一緒に福大のなかで専攻を作っていくという話し合いも始めたところです。単位が取得できるカリキュラムやプログラムを作り、Webマーケティング、プランナーといった職種になれる人材を育成したいと思います。

 ――国内では御社と同じWebマーケティング・コンサルティング業界で、競合会社が少ないイメージがあります。この業界で独自の立ち位置を作るのは難しいのでしょうか。

 前田 私も不思議だと思ってますが、Web業界は今だに全部縦割りになっていて、そこからさらに細分化していますね。一方で大手広告代理店が専門会社を立ち上げ、IBM社がコンサルティングファーム的な動きをしている。また、世界のネット広告シェアトップのアクセンチュア・パブリック・リミテッド・カンパニーがシステムのコンサルティングを行い、シェア拡大を狙うなど、大手は統合型のスタイルに向かっています。一方で中小では統合型と呼べる企業はほとんどありません。私は統合型でないと成果が出せないと思っていたので、最初からそういう体制作りをしてきたんです。

 ――社内で分散してやっているところもありますね。でも、1つのサービス内で分散しているだけで、トータルでやられているところはないですね。

 前田 例えば、ツールベンダー業界の方は、機能を自分たちで開発しているのに「これをどういうシチュエーションで使うんですか?」と聞いても答えられません。弊社のツールは、マーケティング支援をしながら、自分たちのなかで「こういう機能があった方がいい」という発想から生まれてきています。内容によっては弊社もマーケティング支援すべてをお引き受けできないこともありますが、こういった部分が統合型の強みだと思っています。

 ――今後の取り組み、展望についてお聞かせください。

 前田 Webマーケティングを始めた当初、私はデジタルとマスのマーケティングは違うという対立軸の意識でいました。でも今は、デジタルとマスは対立軸ではないし、レスポンスとブランディングも同様に対立してはいない。「マーケティング」という枠で考えると、全部一緒ということに気が付きました。弊社はこれまで「Webマーケティング」といってきましたが、これからは「Web」を取ろうかと思っています。だからといって、積極的にマスやリアルな広告に進出するのではなく、基本はデジタルです。なぜなら、世の中の生活自体がデジタルになっていくからです。IoTで家電がつながる、自動運転でクルマは制御される、通貨ですら電子マネーや仮想通貨が広がっている。生活自体がデジタルになっていくなかで、マーケティングも、ほぼデジタルになっていくでしょう。マーケティングによってクライアントや消費者に高い満足度と幸福感を提供し続け、グローバルにさまざまな事業展開をしていきたい。今はBtoBのツールばかりですが、将来的にはコンシューマー向けのサービスをやっていきたいとも思っています。新しいものを開発するには安定した収益基盤が必要です。今はその基盤を作るための成長の過程にあり、グループ全体として取り組む課題だと思っています。その過程を乗り越え、最終的には全人類をターゲットとしたサービスを提供できる会社となれればと考えています。

(了)
【小山 仁】

※5:マーケティング用語。「購買意欲の核心やツボ」のこと。

<COMPANY INFORMATION>
代 表:前田 哲郎
所在地:福岡市中央区今泉1-20-2
設 立:2004年6月
資本金:1,000万円
売上高:(16/3連結)17億6,271万円
URL:http://www.andus.co.jp/

<プロフィール>
前田 哲郎(まえだ・てつろう)
1971年、熊本生まれ福岡育ち。(株)光通信で10年間テレマーケティング事業に関わったのち、Web
マーケティング事業で2004年にアンダス(株)を設立。Web広告の戦略立案から制作、システム
開発までを一貫して行い、「スマイルツールズ」など自社開発の通販支援ツールを提供。12年には
クリエイターの育成・向上を目的とした、クリエイティブセンター福岡(株)を設立。

 
(中)

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