2024年04月25日( 木 )

ソレキアのTOB合戦が決着~佐々木ベジ氏が勝利、富士通が敗れる(前)

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 東証ジャスダック上場の独立系電子部品商社ソレキアをめぐり、東証二部上場のプラスチック押し出し機製作のフリージア・マクロス(株)のオーナーの佐々木ベジ氏と、情報通信技術(ICT)大手の富士通(株)がド派手なTOB(株式公開買い付け)合戦を繰り広げた。双方、一歩も引かず、TOB価格の引き上げ、買付期間の延長を繰り返してきた。
 だが、TOB価格のあまりの高騰に富士通がギブアップ。バブルの時代「秋葉原の風雲児」として一世を風靡した、佐々木ベジ氏が勝利した。

TOB価格は佐々木氏5,450円、富士通5,000円

 富士通は5月23日、ソレキア(株)に対するTOBが不成立になったと発表した。応募株式総数が、買い付け予定枚数の下限を下回った。敵対的TOBを仕掛けられたソレキアに頼まれて友好的な買収者“ホワイトナイト(白馬の騎士)”として名乗り上げたが、価格競争に敗れて、ソレキアの買収を断念した。経営陣の賛成を得た対抗的TOBが不成立となるのは、極めて珍しい。

 ソレキアに敵対的買収を仕掛けたフリージア・マクロスの佐々木ベジ会長(62)は5月24日、ソレキアに対するTOBで28万5,499株の応募があったと発表した。応募のあった全株を取得し、議決権ベースで32.9%を保有。佐々木氏が筆頭株主になる。佐々木氏の保有分と、フリージアが以前から保有する株式を合せると39.64%を占める。佐々木氏は、株主総会で経営に重要な事案を決める特別決議を拒否できるようになった。佐々木氏はソレキア経営陣の方針に異を唱えており、同社の経営に関与していく。

 最終的なTOB価格は、佐々木氏が1株5,450円、富士通は5,000円だった。

双方がガチンコでぶつかったTOB合戦

 これまでの経緯を振り返ってみよう。

 発端は2月3日。佐々木ベジ氏が、ソレキアに対してTOBを実施することが、関東財務局に提出した届け書で明らかになった。買い付け価格は2,800円で、最大36.4万株(発行済み株式数の36%)を10.2億円で買い付ける。買い付け期間は4月14日。

 ソレキアは、佐々木氏による乗っ取りに猛反発。富士通に“ホワイトナイト”を頼んだ。

 富士通は3月16日、ソレキアをTOBで完全子会社化すると発表した。TOB価格は1株3,500円。佐々木氏が提示したTOB価格より700円高く設定した。買収額は25億円。TOB期間は3月17日から4月28日まで。敵対的買収を仕掛ける佐々木氏と、友好的買収を行う富士通のTOBの引き上げ合戦の火蓋が切った。

 佐々木氏はすかさず3月21日、TOB価格を3,700円に引き上げた。対抗して富士通は3月29日、TOB価格を4,000円に引き上げ、買収総額を29億円に変更。佐々木氏は3月31日、TOB価格を4,500円に引き上げ、TOB期間を4月19日に変更。富士通は4月5日、TOB価格を5,000円に引き上げ、買収総額を36億円に変更。佐々木氏は4月12日、TOB価格を5,300円に引き上げ、TOB期間を4月28日に変更した。

 勝負どころは4月21日だった。佐々木氏が3回目となるTOB価格の引き上げを発表し、富士通の提示価格を上回る5,300円としたため、富士通の出方が注目されていた。富士通はTOB価格を引き上げるのか、TOB合戦から降りるのか――。

 富士通は「投資判断として合理的な水準を超える」と判断して、TOB価格を5,000円に据え置き、買い付け期間を5月10日まで延長した。富士通は白旗を掲げたのだ。

 佐々木氏は4月25日、追い打ちをかけるようにTOB価格を5,450円に引き上げ、TOB期間を5月12日に変更。その後、双方、TOB価格の引き上げはなく、TOB期間を富士通は5月22日、佐々木氏は5月23日に延長した。結果は、富士通のTOBは不成立、佐々木氏のTOBが成立した。佐々木氏はTOBに15.5億円を投じた。

 TOB価格の引き上げ合戦で株価は急騰。佐々木氏がTOBを発表する直前のソレキアの株価は1,942円。それが4月13日には年初来高値の5,670円を付け、2.9倍に上昇した。いかに激しいバトルが行われていたかがわかる。

(つづく)
【森村 和男】

 
(後)

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