2024年04月20日( 土 )

微細藻類が注目されているわけは?(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 皆さんは微細藻類という言葉を聞いたことがあるだろうか。藻類とは大雑把に言えば水中に存在する植物のことをいう。藻類はとても多彩で、植物の常識に当てはまらないものもあるし、藻類の種類の区別も完全に確立したわけではない。藻類の中には肉眼で見ることのできる大きなサイズのものもあれば、目に見えないほど小さな藻類も存在し、それを微細藻類という。

 微細藻類は30数億年前に地球上に現れた最初の生物の一つである。微細藻類は光合成によって二酸化炭素を捕獲し、酸素を作り出す性質を持っていて、生物の進化とも深い関係があるとされている。微細藻類は他の植物と同じように光合成するための葉緑体を持っているが、植物とまた違う面もあり、植物プランクトンとも呼ばれている。その種類は50万種類以上あるとされ、主に海と池などに存在している。微細藻類は生命力が強く、海だけでなく、温泉や深海など厳しい環境でも生きている不思議な植物である。

 しかし、微細藻類についてはまだ分からないことが多く、現在は利用範囲も限られている。ところが、技術の発達と分析技法の進歩により、微細藻類は大きな可能性を秘めていることがわかってきた。微細藻類の一つの可能性として、石油に代替できるバイオ燃料としてのポテンシャルに注目が集まっている。米国では15年に航空機燃料の50%をバイオ燃料にするとしていたので、微細藻類をバイオ燃料として活用するための研究が盛んに行なわれている。日本も20年まで航空機燃料の10%をバイオ燃料にするという計画が発表されている。地球環境をこれ以上汚染させないため、各国ではバイオ燃料を化石燃料の代替燃料にしようとしているが、まだまだバイオ燃料は値段が高く、数年前から急浮上したシェールオイルと競合しても、価格面で太刀打ちできる状況ではない。それからバイオ燃料の場合は、原料がトウモロコシなど食用の作物であることが多いので、食料価格を高騰させる問題も抱えている。そのような意味では、微細藻類はバイオ燃料が抱えている上記のような問題はクリアしている。しかし、微細藻類も大きな技術的なブレークスルーがない限り、微細藻類を燃料にしようとする試みは、今のところそれほど成功していない。

 それでは、なぜ微細藻類は注目されるようになったのか。まず、考えられるのは、微細藻類は陸上植物にくらべ、脂質生産能力が高いという点だ。それに微細藻類は陸上の植物、例えばトウモロコシ、大豆などと違い、通年での収穫が可能である。

 さらに、 繁殖力の強い微細藻類の菌株がうまく見つかれば、培養スピードが速く、効率的な培養ができることも特徴である。例えばDHAを例に考えてみよう。DHAは魚から取れる成分で、視力と脳に深い関係があり、頭をよくするといわれ、一時期かなり流行ったことがある。健康食品、粉ミルク、乳酸菌などに配合され、日本でも知らない人がいないほど認知度が高い。実はDHAを生成する酵素は人体にはないため、私たちは魚油からDHAを摂取している。しかし、魚油から取れるDHAは量に限界がある。それに魚は環境汚染によって犯されている危険性もあるし、生臭さもある。ところが、魚は微細藻類を食べることでDHAを体内蓄積しているだけなので、魚からDHAを摂取するのではなく、微細藻類からDHAを摂取する方法もあるわけだ。このように微細藻類は機能性食品、健康食品、医薬品の原料、化粧品の原料などバイオ分野の高付加価値の原料としての利用価値が高く、その可能性に多くが注目している。

(つづく)

 
(後)

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