2024年04月26日( 金 )

文明国・日本に「奴隷制度」が存在する?(中)

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(一財)DEVNET JAPAN 明川文保 代表理事

1月25日に認可法人「外国人技能実習機構」が設立

 ――送り出し国、受け入れ国の「悪の連鎖」は想像していた以上に衝撃的でした。その「悪の連鎖」を断ち切るために、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律「技能実習法」が本年11月1日に施行されます。新法はどのような特徴を持っていますか。

 明川 新法「技能実習法」の特徴は、制度発足時の崇高な理念を徹底させた上で、「監理監督体制を強化するとともに、技能実習生の保護等を図る」ことを目的としています。すでに1月25日に認可法人「外国人技能実習機構」(鈴木芳夫理事長・弁護士)が設立されました。同機構は外国人の技能、技術又は知識の修得、熟練又は熟練に関する技能実習の適切な実施及び技能実習の保護を図り、人材育成を通じた開発途上地域等への技能等の移転による国際協力を推進することを目的としています。

 地方事務所を本所8カ所(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡)、支所5カ所(水戸、長野、富山、松山、熊本)設け、全国をカバーしています。

 具体的な所掌事務として、実習実施者・監理団体対にする報告徴収、実施検査等があります。監理団体(約2,000団体)への実地検査を年1回実施、実習実施者(約35,000社)への実地検査を実施します。(3年間で全数を網羅)

監理団体は「許可制」で、実習実施者は「届出制」

 今後は、新法施行に基づき、管理監督体制が一段と強化され、技能実習生の保護等を図る様々な見直しがされていくと思います。具体的に、現在決まっている大きなものは以下の通りです。

 (1)実習生の送り出しを希望する国との間で政府(当局)間取り決めを順次作成することを通じ、相手国政府(当局)と協力して不適正な送り出し機関の排除をする。→政府(当局)間の取り決めがない保証金を徴収している等の不適正な送り出し機関を根絶させることを狙います。

 日本政府は、2017年6月6日付で、送り出し国の中で初めて、ベトナム政府との間で技能実習における協力覚書(二国間取決め)を締結しました。今後は、3,600ドル(授業料、教科書代、寄宿舎費用など全てを含む)が基準となり、法外な搾取(現行は7,000~13,000ドル)はできないことになります。

 (2)監理団体については許可制、実習実施者については届出制とし、技能実習計画は個々に認定制とする。→監理団体を許可制とし、許可の基準や許可の欠格事由の他、遵守事項、報告徴収、改善命令、許可の取り消し等を規定します。

 (3)新たに、法務大臣と厚生労働大臣を主務大臣とする、外国人技能実習機構(認可法人)を創設し、監理団体等に報告を求め、実地に検査する等の義務を実施する。→民間機関である(公財)国際研修協力機構の法的権限のない巡回指導体制から脱却し、体制を強化します。従来は法務省入国管理局の書類審査だけだったものが、事前にその内容・詳細について、厚生労働省が全国の労働局や労働基準監督署を通じて審査するという厳しい体制が整いました。

 (4)通報・申告窓口を整備。人権侵害行為等に対する罰則等を整備。実習先変更支援を充実させる。→技能実習生に対する人権侵害行為等について、禁止規定を設け、違反に対する所要の罰則を規定するとともに、技能実習生に対する相談や情報の提供、技能実習生
の転籍の連絡調整等を行うことにより、技能実習生の保護等に関する措置を講じます。

 (5)業所管省庁、都道府県等に対し、各種業法等に基づく協力要請等を実施、これらの関係行政機関からなる「地域協議会」を設置し、指導監督・連携体制を構築する。→不十分であった従来の業所管省庁等の指導監督や連携体制を強化します。

従来最大3年間であったものが5年間に延長される

 さらに、今回の見直しでは、不適切な監理団体を排除することと並行して、優良な監理団体を奨励、拡充する策が図られています。

 (1)優良な監理団体等(法令違反がないことは勿論、技能評価試験の合格率、指導・相談体制について、一定の要件を満たした監理団体及び実習実施者)は実習期間が延長される。→従来最大3年間であったものが5年間の実習(一旦帰国後、最大2年間の実習技能実習第3号)が可能となります。

 (2)優良な監理団体等における受け入れ人数枠の拡大が認められる。→常勤従業員に応じた人数枠が、最大5%(旧)までから最大10%(新)までと倍増されます。

 (3)対象職種が拡大する→地域限定の職種・企業独自の職種(社内検定の活用)、複数職種の実習の措置など、職種の随時追加が認められます。

 また、今回の改正では、新たに介護分野を対象に加える方針も示されています。16年11月28日に公布された入管法では、新在留資格「介護」(本邦の公私の機関との契約にもとづいて、介護福祉士の資格を有するものが介護または介護の指導を行う業務に従事する活動)が創設されました。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
明川文保(あけがわ ふみやす)
山口県美祢市生まれ。1973年山口県防府市に日本初の冷凍冷蔵庫・普通倉庫を備えた3温度対応の総合流通センターを開設(コールドチェーン物流の先駆け)した。第56・57代内閣総理大臣を歴任した岸信介氏の後援会青年部会長、83年衆議院議員安倍晋太郎 私設特別秘書、88年九州山口経済連合会の国際交流委員・運輸通信委員・農林水産委員、04年参議院議員福島啓史郎氏全国広域後援会本部特別顧問・特別秘書、06年DEVNETアジア・太平洋地域特別親善大使及びラオス・カンボジア・ベトナム地区総裁、09年上海万博DEVNET館特別顧問、11年東久邇宮国際文化褒賞記念会設立 代表理事などの要職を歴任した。13年DEVNET Tokyoを設立して代表理事に就任、15年「ミラノ万博」国連KIPパビリオンに日本代表として出展。同年DEVNET JAPANに改名。同組織は16年にアジア(一部地域を除く)代表オフィスに認定。

 
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