2024年04月23日( 火 )

元「鉄人」衣笠氏が斬る!~日本シリーズを振り返る・よい勉強をしました(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 ただ、ここで素晴らしいラッキーボーイが出現します。若い濱口遥大投手の快投です。確かにソフトバンクからすれば「もう1勝で優勝だ」という気の緩みが0というわけではなかったと思いますが、浜口投手の素晴らしい投球には気がつけば完全に押さえこまれていたという状況になっていました。8回に鶴岡選手がヒットを記録するまで誰も打てず、ベンチは心配したことでしょう。若い投手に完全に押されてどうにもできなかった打線、これが大きな波になり5戦目に響いてくるのだから野球は怖い。5戦目で惜しかったのは、初回に先制点を内川選手に打たれたことだろう。せっかくの昨日のムードがこれで戻されたように感じました。これが強いチームということでしょうか。
 石田投手が頑張りきれなかったが、リリーフ陣が今度は頑張り打線も期待に応えて期待の筒香選手の本塁打を含めて5対4で勝利を挙げました。この勝利は大きいと思います、自分たちのチームの力が強いソフトバンクに通じると全員が思ったことでしょう。ここまでのつらい試合経験が、この試合を支えてくれたと思います。

 2001年イチローが海を渡り、シアトル・マリナーズに入団した年に、何度かシアトル対ボストン・レッドソックス、シアトル対ニューヨーク・ヤンキースの試合を現地で見る機会に恵まれました。当時、ボストンも打線が強く、絶えず上位にいた時代でしたが、シアトルはイチローの加入により打線が完成。1番のイチローが完璧な1番打者の働きをして相手を揺さぶり、この年100勝以上の勝ち星を挙げたシーズンでした。
 見ていて、シアトルはボストンと試合をやる時にはいい試合をしてお互い一歩も引かない試合が多いのですが、ヤンキースと試合をすると見ていて「どうしてだろう」といってしまうほど試合の主導権を握られ「野球が違うな~」と見えることが多かったのですね。でも、ヤンキースの野球はそつがなく、一つの塁を奪うことにかける執念、防ぐことの大切さを見せてくれていることに気がつくまで時間はかかりませんでした。「野球の質が違う」という感じがしたのです。このような野球を身につけるまでにどれだけの「失敗」「反省」「研究」経験」を繰り返してきたのだろうか、このチームは?というチームに見えました。
 第6戦も素晴らしい教材になる試合ではなかったでしょうか?2回にソフトバンクが先制点1点、5回にDeNAが3点を奪い逆転、白崎選手の本塁打で同点のあと2点を追加、勝利が見えてきたという展開でした。ここから両チームのリリーフが頑張り、動きがあったのが8回、1死3塁、柳田選手の打った投手ゴロ。3塁ランナーがホームに突入、ボールを取った砂田投手は何気なく1塁に送球、これで1点入り、1点差の試合になってしまいまた。なぜ、3塁ランナーを見なかったのだろうか?砂田投手は、アウトにできたタイミングだったと思います。ここでの1点を防いでおけば9回の内川選手の一打は同点にならなかったということです。1点をいかにして抑えて試合を進めるか、この事の大切さを教えてもらったことでしょう。
 いずれにしてもDeNAは今年の日本シリーズで大きな財産を貰ったということになります。まだ完成してない若いチームですし、この経験をどこまで吸収して来年を迎えるか?楽しみですね。他の5球団にとっては脅威となることでしょう。
 もう一つ、ソフトバンクも次のチームに移行していくように思えます。サファテ投手の後釜、内川選手の後釜をどのように準備するか?監督、コーチの仕事が増えてきたように感じたこの日本シリーズでした。

(了)

2017年11月11日
衣笠 祥雄

 
(前)

関連キーワード

関連記事