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トランプ政権下でいよいよ本格化した官僚機構の反乱(3)

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SNSI・副島国家戦略研究所 中田安彦
2017年12月11日

 軍需産業やエネルギー産業については、トランプは、海外へのトップセールスや、国内での資源開発に環境規制緩和などを打ち出しているので、官僚組織やシンクタンク層からの不満は少ないだろう。日本も相当に武器を買わされている。不満をいだいているのは、イデオロギー的にロシアや中国、イランといった民主的ではない国々の体制転換をライフワークにしているような、ネオコン派とか、民主的人道介入主義者といわれる左右の軍事タカ派たちだ。

 11月下旬に、突如、レックス・ティラーソン国務長官が更迭されるというニュースが主流派のリベラルメデイアで流れた。アメリカのニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストやニュース局のCNNなどは、日本でいえば、朝日新聞や読売新聞、NHKといった存在で、官庁とべったりとなっている。

 日本のメディアとくらべてアメリカの新聞は政権批判も厭わないが、それでもまったく官僚機構と敵対しているわけではない。メディアと官僚機構にとって共通の敵である、トランプのようなポピュリズムをスタイルとして利用する政治家が出てきたときは、彼らは官僚機構と結託する。ポピュリズムは既製秩序の転覆を行うことであり、決まったレールに乗っている人にとっては歓迎できないのだ。

 ティラーソンはエクソン・モービル社の元CEOで、その意味では支配層側の人間だが、商売人なので、ネオコン派や理想主義的な官僚たちのようにイデオロギーには毒されていない。ロシアとも中国ともうまくやろうとする大人の人間だ。だからこそ、官僚機構のコントロールはうまくできないようで、彼の国務省での人事の遅さには批判が集まっていた。

 ただ、ティラーソンは私が「世界権力者図鑑2018」で書いたように、ネオコン派とは縁を切ったロックフェラー系の大番頭だったヘンリー・キッシンジャー元国務長官の息のかかった人間である。

 ネオコン派にとって今の最大の敵は中国ではなく、ロシアである。戦略家のなかには、スティーブン・ウォルトやジョン・ミアシャイマーのように「アメリカの最大のライバルは中国」という認識を持っている碩学たちもいるが、これは少数派。大多数の外交・安全保障のエスタブリッシュメントにとっては、中東からウクライナにかけたユーラシア大陸の西のはずれの秩序安定が重要であるという冷戦時代からの発想がまだまだ根強いのだ。

(つづく)

<プロフィール>
nakata中田 安彦(なかた・やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。

 
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