2024年04月20日( 土 )

ネットに負けないリアルの逆襲~蔦屋書店から見る書店の未来(前)

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カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)

 今から30年前をピークにゆるやかな減少傾向をたどっている全国の書店。当時と比べれば約3分の1まで縮小しているのだが、その背景にはネット通販がある。近年、急成長を見せる国内のeコマース市場に対抗する手段としてリアル店舗の強化を行う企業がある。全国大手のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)だ。

六本松421にオープン 文化の地産地消がテーマ

 2017年9月25日、福岡市中央区の九州大学六本松キャンパス跡地に開業した複合商業施設「六本松421」。JR九州が開発したこの施設の目玉として開業したのが、「蔦屋書店六本松店」である。福岡市地下鉄七隈線「六本松駅」前という好立地もあり、オープン時には話題を呼び、初日から多数のメディアが取材に訪れた。

 2階にある同店には180席が設けられ、来店客は本を読みながらコーヒーを楽しむことができる。これを同社ではBOOK&CAFEスタイルと呼ぶ。六本松店では、“GOOD LOCAL”をスローガンとし、文化の地産地消を目指しているという。店内には、旅、食、子育て、音楽、ファッション、アートの6ジャンルに関する本や音楽、映画を取りそろえ、地元出身者を中心に構成する各分野に精通したコンシェルジュによるサポートが特徴だ。そのほか、トークイベント、ワークショップ、アート展示なども行われ、文化に興味をもつ層の掘り起こしを行う。併設されたスターバックスコーヒーでは、九州では同店でしか味わえない、コーヒーに窒素ガスを加えて口あたりよく仕上げた「スターバックス コールドブリューコーヒー」を楽しむことができ、若者だけでなく、シニア層の来店を目論んでいる。

 六本松店では午前7時のオープン時に、野菜ソムリエが提案するスープやスムージーを味わえるほか、店内スペースで朝ヨガを実施する。書店で朝ヨガを行うのは珍しい試みという。従来のCDレンタルや書籍販売主体の「TSUTAYA」業態とは大きく異なる様子が伝わってくる。

 物ではなく雰囲気を売る。物の購入はネット通販でも可能だが、店の雰囲気や空間を楽しむことはできない。ネット通販には真似できないことを実践した結果が、このような業態につながったといえる。

(つづく)
【矢野 寛之】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:増田 宗昭
所在地:東京都渋谷区南平台町16-17
設 立:1983年3月
資本金:1億円
売上高:(17/3)2,551億4,700万円

 
(中)

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