2024年04月26日( 金 )

福岡「建設×不動産」業界の雄2社対談 どうなる今後の業界動向(後)

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(株)コーセーアールイー 代表取締役 諸藤 敏一 氏
上村建設(株)      代表取締役 上村 秀敏 氏
             常務取締役 上村 英輔 氏


難しくなったローコスト工事

 ――諸藤社長、福岡市内では今後、どれほどの市場を取っていけると想定していますか。

(株)コーセーアールイー 諸藤 敏一 代表取締役

 諸藤氏 福岡都市圏では約3,000戸ではないでしょうか。すでに収支が合わなくなってきていますし、空き地があるわけでもない。土地が見つかっても入札で相場の2倍、3倍となります。そのような中で、弊社が描く戦略は、築40年ほどで解体コストが高くなるマンションを購入して、家賃を取りながら原価を薄めて10年後、20年後に建て替える。
 仕入れて、すぐに売りに出す、というモデルはもう難しくなっています。糟屋や新宮、筑紫野などには、ローコストマンションがありますが、いまや都会も田舎も工事費は同じ。ローコストにならないのが現実です。
 わかりやすい例でいえば、熊本市内のマンション4LDKが3,500~4,000万円。車で10分走れば、建売60坪、駐車場2台と庭付きで2,600万円という戸建物件もある。そのような中で戦っていくのは並大抵ではない。極端にいえば、熊本市はマンション事業に適した土地ではないのです。
 長崎や鹿児島は平らな土地が少ないので、マンション適地だといえます。高台にある戸建てを売って、利便性が高い平地のマンションに住み替える需要はあります。現在、弊社では鹿児島中央駅の近くでマンションを販売しています。最上階は鹿児島初の「億ション」だと思いますが、売れました。

 ――やはり仕入れてから売るまでに時間がかかるようになるということですね。

 秀敏氏 弊社が管理している築30~40年のマンションをオーナーから一棟買いさせていただきました。あくまで相談があった場合に限りますが、このようなかたちでの物件取得は増えてくると感じています。オーナーの高齢化にともなう相続が背景にあります。

 諸藤氏 管理を徹底するためには、清掃の充実が不可欠ですが、人手不足は深刻です。マンションやホテルもそうですが、機械化できる部分はAIなどの活用が始まる時代に突入していくでしょう。管理会社を都市部に移転させたいという思いはありますが、今働いてもらっている清掃員の方々を確保しなければ成り立たないために、移転もままなりません。

 ――福岡には空き地がない。既存の建物を建替え、付加価値を付けていくしか残された道はないということですね。

 諸藤氏 望まれるのは容積率の緩和です。容積率を倍にすれば、2倍の建物が建つ。利用者は「空港が近くて便利だ」と言いますが、業界ではこの容積率に悩まされるケースが多々あります。しかし、西に行けば行くほど、工夫によっては現実可能なところはあります。

「100年企業」を目指して

 ――来年で大きな節目を迎えるわけですが、上村社長、今後の経営で目指すものはなんでしょうか。

(左から)上村建設(株) 上村 英輔 常務取締役、
上村 秀敏 代表取締役

 秀敏氏 基本方針は、「100年企業」を目指して挑戦していくことです。弊社は来年60周年の節目の年を迎えます。今のビジネスモデルを土台にして、新しいものを立ち上げていくしかありません。それが生き残る道です。

 英輔氏 100年に向けて、これまでに培った良い土壌があります。これから私の仕事は今の社員に愛社精神をもってもらえるようにし、しっかりと筋肉質な組織にすることです。建設業は波が激しいので、中期計画が立てづらかった。しかし社員に夢を与えられるような会社にしたいと社内改革をし、一級建築士の資格取得支援制度、現場員の女性登用などに取り組んでいます。

 諸藤氏 歴史があるというのは、それだけで評価されるべきものです。しかし、歴史が長ければ長いほど、会社にも「脂肪と贅肉」がついてくる。筋肉質にするためには、それらをそぎ落とす作業も必要になるので、さらに大変だと思います。

建設現場にも「働き改革の波」が

 ――対談の最後に、お互いに聞いてみたいことをお願いします。まずは諸藤社長から上村社長へ。

 諸藤氏 ぜひ聞いてみたいのは、1点だけです。今後の建設市場の予測。我々が仕事を掘り起こしたとしても、ゼネコンさんの仕事が手いっぱいで請けてもらえないのです。そこが懸念するところです。この状況は今後も続くのでしょうか。

 秀敏氏 しばらくは続くでしょう。人手不足は解消しないと思いますし、2019年には消費税の増税も待っています。第2の駆け込み需要の発生も想定されますので、この状況はしばらく変わらないと思います。
 ――上村建設の施工能力としては、近年の完工高250億円が限度というところでしょうか。

 秀敏氏 現場を請けるのは簡単ですが、監理者が限られます。建設現場にも働き方改革の波が来ており、2021年までに週休二日制にするように、との方向性が示されています。工期が伸びれば、現状維持も、そう簡単な話ではありません。時代の流れを受け入れていかなければならない時期に差しかかっています。あとは技術革新などで工期短縮を目指すしかないと思います。

 英輔氏 弊社は技術者だけで120名ほど在籍しています。売上高でみれば、1人あたりで約2億円。これを同業者と比較してみると、もっと多い企業もあります。しかし、私たちは品質管理や安全管理で隙が生じてはいけないと思っています。無理をして売上を上げることは可能ですが、そういう選択を取るつもりはありません。

 ――では、上村社長から諸藤社長へ。

 秀敏氏 福岡市以外でポテンシャルがありそうなエリアはどこだと思いますか。

 諸藤氏 九州では、長崎・熊本・鹿児島の3県です。やはり新幹線の影響が大きいです。開発案件も九州では、その3県が多いのは間違いないところ。東側の大分、宮崎は話が少ないことからもわかります。逆に新幹線が通ったことで、出張したビジネスマンが熊本や鹿児島に宿泊しなくなりました。翌日、飛行機で帰るなら、いったん博多に新幹線で戻って一泊しようという方が多いようです。福岡からのほうが飛行機の便が多いですし、福岡の夜を楽しみたいという要望も多く、福岡のホテル不足の一因になっているとも言われています。

(了)
【文・構成:東城 洋平】

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