【BIS論壇No.393】最近の日本経済の動向
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NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
今回は10月22日の記事を紹介する。2022年4~9月の上半期の日本の貿易赤字は11兆円で、上半期では東日本大震災の時を超えて、過去最大となった。
円安、資源高が影響したとメディアは報じているが、エネルギー部門では石炭が236.8%増と抜きん出ている。9月の貿易収支も2兆940億円の赤字で9月としては赤字額は過去最大。赤字は14カ月連続だ。ウクライナ危機による需給混乱で、資源高、食料高が続くなか、さらに円安も加速。輸入価格が高騰。貿易赤字はさらに続くと予想される由々しき事態だ。
一方、円安は150円を突破。1990年8月以来32年ぶりの大幅円安で、152円を目前に乱高下している。そのため、輸入コストの膨張のみでなく、円安にも関わらず、輸出も停滞。人材・資本の日本離れも招きつつある。円安メリットが利きにくくなっているのだ。
貿易収支は32年前の90年は7.6兆円の黒字だった。これが22年1~9月には14.3兆円の赤字となった。原油はWTIで90年の28.44ドルに比し85.55ドルと3倍に高騰。
さらに円の購買力は103.97から22.4と5分の1弱に低下。海外での生産拡大の影響で海外生産比率は90年の4.6%から22.4%に増加。産業の空洞化が進行している。
さらに円の実質実効レートは95年をピークに低下。変動相場制になった73年以前の1ドル360円の水準まで低下している。これは日本の円安が止まらず、日銀が低金利依存から抜け出せない日本経済の弱さを突かれているとの見方が強い。
一方、食料の自給率は4割。エネルギー輸入依存度は9割で国外への所得流出が激増している。40年には海外からの労働力追加受け入れは400万人が必要とみられているが、日本は出稼ぎ先に選ばれにくくなっているという。かかる状況下、日本では個人は外貨預金や海外株への投資を増やしており、約1,000兆円の預金が海外に流出する懸念が高まっている由々しき事態になっているという。(日本経済新聞10月21日)
物価も円安がコストを押し上げ、9月の消費者物価上昇率は生鮮食品を除いて3%とこちらも31年ぶりの上昇だ。とくに2022年9月は生鮮食品を除く食糧は前年同月比4.65%増。電気は実に21.5%、ガスは19.4%増とコロナで苦しむ国民の生活を直撃している。
最近の円売りの裏側には日本経済のもろさがあるためで、日本の潜在成長率は32年前の4%台から0%台前半まで下がっている。かかる状況下、日本の1人あたりGDPは30位以下に沈下。初任給では韓国にも抜かれていると憂慮されている。
岸田政権は米国に従い、経済安全保障推進法で中国への先端技術の輸出規制、新サプライチェーンの再構築など検討中だ。だが「ゼロチャイナ」だと日本にとり14兆円のコスト増になるとの試算もある。(日本経済新聞10月22日)。日本としては長期的な視点から日本独自の貿易政策を確立し、21世紀に発展、躍進する中国、インド、ASEAN諸国との戦略的な長期戦略、協力策を確立することこそ喫緊の課題であろう。
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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