【BIS論壇No.395】大学教育費、日本5割を家庭負担
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NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
今回は11月5日の記事を紹介する。英国教育専門誌『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション』のランキングにおいて、日本の大学の順位が急低下したことを「BIS論壇No.394」(22年10月28日)で紹介した。アジアトップの中国・清華大学が世界で16位、シンガポール国立大学が19位の上位に躍り出ているのに比し、上記アジアの2大学に比し、東大は約20位下の39位、京大に至っては約50位も下の68位に急速に沈下している悲しむべき実態を報告した。
医学系でも関西医科大学が601-800位、藤田医科大学が801~1000位。順天堂大学が801~1000位とランク付けされている。このほど発表された経済協力開発機構(OECD)報告でも、「日本の大学教育は家庭の経済力頼みだ」「日本は奨学金見直しをすべし」とアドバイス。すなわち大学レベルの教育で日本の家計負担の割合が実に5割を超え、52%で、35カ国中、4番目に高いという報告書をまとめた。ちなみに米国44%、韓国42%、フランス12%で、OECD平均は22%だ。
日本の家計負担52%は極端に高い。それに比し、デンマーク、フィンランドなど北欧諸国は0%で全額国庫負担だ。アジア初のOECD事務次長を務めた谷口誠元国連大使、岩手県立大元学長(BIS名誉顧問)によると大学学長の国際会議で、OECD諸国は大学の授業料がほとんどの国が政府負担なのに比し、日本の大学の授業料は高いうえに、家庭の負担がOECD諸国に比し極端に高いということで、肩身の狭い思い経験をしたという。
OECD報告書は「日本政府は経済的に苦しい学生への支援策を広げているが、まだ足りないと指摘。日本の奨学金制度の見直しを求めた」という。大学教員に於ける若手や女性の比率が低いことも指摘している(朝日新聞10月30日)。
日本の家計負担は52%で、政府の教育への公的支出よりも多く、OECD加盟国平均22%の倍以上で、35カ国中4番目に高いと批判。一方、小学校から大学までの教育機関への公的支出全体に占める割合は19年で日本はわずか7.8%で、OECD平均(10.6%)を下回っている。さらに、国内総生産(GDP)に占める教育への日本の公的負担はわずかに2.8%で、これもOECD平均4.1%を下回り、37カ国中下から2番目の36位で、アイルランド(2.7%)と最下位を争っているという情けない状態だ。
自民党政権は敵基地攻撃などと国防予算を5年で2倍にすると息巻いているが、まず国の礎となるべき教育への投資を倍増することこそ先決ではないか。
OECDはさらに日本の大学は30歳未満の教員の比率が2%とOECD教員の比率8%より少ない。女性教員の割合も30%で、OECD平均45%を下回り、35カ国中最下位だと警鐘を鳴らしている。女性活用についても抜本的な検討が必要だ。
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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