【BIS論壇No.397】一帯一路の現況と習主席サウジ訪問
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NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
今回は12月12日の記事を紹介する。習近平・中国国家主席はこのほど世界最大の産油国サウジアラビア(以下、サウジ)を7年ぶりに訪問。エネルギーや通信技術を含む戦略的包括協定を締結した。サウジは近年、石油収入依存からの脱却を目指し、中小企業を含め、産業の多角化を目指している。先日、サウジ大使館が東京で開催し、筆者も参加した「サウジ経済セミナ―」でも同国産業の多角化に対し日本からの協力を強く要請。とくに中小企業の進出を期待しており、その熱意に並々ならぬものを感じた。
米国は2000年代からのシェール革命で最大の産油国となり、中東への米国の関与は低下している。その間隙を縫って、中国はアラブ諸国への影響力を拡大する狙いがあるものとみられる。サウジは中国の石油の主要な調達先で、21年のサウジ産原油の輸入量は全体の17%を占め、国別でトップだ。サウジにとっても13年以降10年にわたり、中国は最大の貿易相手国となっている。
今回、両国が調印した協定には、習主席が2013年以来、国家プロジェクトとして鋭意推進中の21世紀の巨大経済圏構想「一帯一路」と、サウジの国家改革指針「ビジョン2030」の連携が盛り込まれた。同ビジョンによると、サウジは石油依存からの脱却と産業の多角化で、総工費5,000億ドル(約70兆円)の人口900万人の未来都市建設を含め、観光立国、スポーツ振興など意欲的だ。
今回両国が調印した投資案件はグリーン水素、自動運転技術、医療など多岐にわたり総額300億ドル(約4兆円)に上るという。これにはファーウェイ(華為技術)によるサウジへの技術供与や、中国企業のサウジへの直接投資、水素エネルギー分野での協力なども含まれている。習主席は会談で「2つの計画の連結を実行し、各分野の協力が成果を収めるよう推進したい」と述べたという。(『朝日新聞』12月10日付)
習主席は中東における「一帯一路」推進で重要になるアラブ戦略をさらに推進するために、12月9日には湾岸協力会議(GCC)やアラブ諸国との初の10カ国以上の首脳が参加する首脳会談も相次いで開催し、アラブ市場へくさびを打ち込んだ。
近来、日本の学会や、メディアでは中国の「一帯一路」は峠を越えたとの見方がある。だが、習近平主席が13年来注力する21世紀の世界最大の広域経済圏構想「一帯一路」は目下躍進中であり、発展中の中央アジアから中東、アフリカを経て欧州に至る、まさしく21世紀最大の陸海空を連結する中世シルクロードの再現だ。
先日NHKによるトルコから中央アジアを経て西安に至る100日のシルクロード踏破の番組が放映された。世界最大の地理的空間を抱え、最大の人口と、最大の交易路を要する21世紀の壮大なる“Belt & Road Initiative(B&RI)=「一帯一路」戦略は、21世紀の新たなシルクロードとして、世界物流革命と人類運命共同体構築に成功するであろう。
日本としても批判するのみでなく、21世紀最大のプロジェクトB&RIに積極的に関与することを21世紀の国家戦略として真剣に考究すべきではないか。
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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