2024年03月29日( 金 )

福岡・箱崎地区の都市革新「FUKUOKA Smart EAST」プロジェクト(前)

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 順次移転が進んでいる九州大学・箱崎キャンパス。キャンパス周辺を含めた福岡市街地における約50haという広大な敷地の利用をめぐっては、民間事業者の注目が集まっている。昨年には市の新プロジェクト「FUKUOKA Smart EAST」も発表され、今後の新たなまちづくりにさらなる期待が寄せられる箱崎キャンパス跡地再開発について、見てみよう。

順次進むキャンパス移転

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 現在、九州大学では、各地のキャンパスを福岡市西区と糸島市にまたがる新キャンパス「伊都キャンパス」へと統合移転させるプロジェクトを進めている。移転プロジェクトはすでに「第Ⅰステージ」(2005~07年度)、「第Ⅱステージ」(08~11年度)の2つのステージが完了。現在は、18年度までの完了を目指す「第Ⅲステージ」へと段階が進んでいる。

 箱崎キャンパスは現在、05年10月の工学系移転を皮切りに順次移転が進んでおり、15年度には理学系が移転完了。18年度には人文社会学系と農学系が移転完了する予定。現在、すでに移転が完了した工学系・理学系地区については、順次取り壊し作業が進められており、閉鎖された建物の一部はすでに解体されてしまっている。

 同キャンパスの跡地利用については、計画的なまちづくりと円滑な跡地処分に向けて、12年3月に「九州大学箱崎キャンパス跡地利用将来ビジョン検討委員会」が設置され、13年2月に同委員会より「九州大学箱崎キャンパス跡地利用将来ビジョン」が提言された。この将来ビジョンの実現に向けて「箱崎キャンパス跡地利用協議会」が設立され、協議・検討が重ねられている。すでに17年3月までに10回の協議会が開催され、少しずつだが、再開発後のビジョンの輪郭が現れてきている状況だ。

九州大学発祥の地・箱崎

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 箱崎キャンパスは九州大学発祥の地であり、かつては工学系、理学系、農学系、文系が集積した九州大学の本拠地であった。場所は、福岡市の都心部にもほど近い東区の箱崎地区に位置しており、周辺には多々良川、宇美川が流れ平坦な市街地を形成。福岡空港や博多港、博多駅、福岡インターチェンジなどが6km圏内にあり、地下鉄箱崎線、JR鹿児島本線、西鉄貝塚線の駅からも近い交通利便地となっている。また、陸海空の物流拠点が近隣に位置しており、キャンパス周辺の幹線道路は、それらを結ぶ重要な動線でもある。さらに、ルミエールやドン・キホーテ、マックスバリュなどのディスカウントストア、食品スーパーが乱立する激戦区であり、ゆめタウン博多やイオン香椎浜などの大型商業施設も比較的近い場所にある。

 同キャンパスは工学系地区が17.6ha、理学系地区が3.7ha、文系地区が10.4ha、農学系地区が10.9ha、キャンパス全体では42.6haという広大な敷地を持つ。このようにまとまった広さを有し、かつ交通利便性にも富んだ箱崎キャンパスは、福岡市街地においてはいわば“残された一等地”であり、その跡地利用については多大な関心が寄せられている。

 だが、いくつかの課題もある。たとえば近代建築物の問題。九州大学発祥の地としての歴史を持つ箱崎キャンパス内には、1930(昭和5)年に建てられた鉄筋コンクリート造の工学部本館をはじめ、煉瓦造の本部第一庁舎(大正14年)および本部第三庁舎(大正14年)、創立五十周年記念講堂(昭和42年)などといったように、大正~昭和にかけて建てられた歴史的価値の高い近代建築物が多数残されている。これら近代建築物の取り扱いについては幾度も協議が行われた結果、前述の工学部本館、本部第一庁舎、本部第三庁舎のほか、正門と正門門衛所の5つを近代建築物群として保存・活用することが決定。それ以外の近代建築物については、映像記録や3次元測定、部材保存などが実施されたうえで、建物が解体されることになる。

 また、埋蔵文化財の問題もある。この地区には地下に箱崎遺跡や元寇防塁跡などが眠っており、新たに地面を掘り返すと、遺物・遺構が出土する可能性が残されている。そのため、建物解体時に試掘調査を実施する必要があるのだ。さらには埋蔵文化財に加えて土壌汚染調査の必要もあり、一朝一夕には計画が進まないのが現状だ。

(つづく)
【坂田 憲治】

 
(後)

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