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特別取材

消えた資金調達話~パシフィックHD倒産の舞台裏
特別取材
2009年3月11日 10:38

 東証1部上場の不動産投資ファンド運営会社「パシフィックホールディングス」が3月10日、東京地裁に会社更生法の適用の申請を申し立て、倒産した。子会社2社を含めた負債総額は約1,940億円。約8カ月に渡って株価が乱高下するなど、まるで仕手銘柄のような値動きに不自然さを感じる向きは少なくない。

 パシフィックホールディングス社のビジネスとはありていに言えば、不動産転がしだった。借入金を元手に、目をつけたオフィスビルなどの不動産物件を購入し、それを自らが関わって組成した不動産投資ファンドに転売して利ざやを稼ぐ。組成する不動産投資ファンドには内外の金融機関や外資系ファンドなど投資家のカネが期待されてきた。
 ところが昨年来の金融危機で、この不動産投資ファンドへの資金の出し手がいなくなった。一方で先行取得していた物件の借入金の返済が迫る。手持ちの保有不動産を売却して返済原資を確保しようにも、折からの不動産価格の大幅な下落が直撃し、売ると損失が発生してしまう。そもそも売ろうにも買い手がつかない。かくして3月末に返済期限の迫った840億円の手当てが出来ず、資金繰りに窮し、倒産に追い込まれた。
 こうした事態は昨年夏にはすでに顕在化し、パシフィック社は昨年7月、大和証券グループ本社からの資本参加を得て債務超過を回避すると発表。株価はそれを好感して一時上昇したが、結局9月の「リーマンショック」によって大和が資本参加への合意を撤回し、株価は大幅に下落した。

 そんななか救世主としてあらわれたのが、ダイエーやカネボウの再生案件で大いに名前を売った産業再生機構の冨山和彦専務が率いるコンサルティング会社「経営共創基盤」だった。冨山氏の東大在学中の友人で、経営共創基盤の取締役もしていた経営コンサルタントの菱田哲也氏が、たまたまパシフィック社の社外取締役だったことから、菱田ルートでパシフィック社救済の話が持ち込まれた。菱田氏は産業再生機構ができる直前に内閣府に設けられた「産業再生機構設立準備室」の準メンバーで、機構発足と同時に正式メンバーとして移る予定でいたが、旧UFJ銀行など金融機関から過去の経歴を疑問視され、正式メンバーになれなかった経緯のある人物だ。そんな菱田氏を不憫がって、冨山氏が経営共創基盤を設立する際に招き入れたようだ。

 経営共創基盤は冨山氏ら再生機構のOBが中心になって起業した会社で、モルガン・スタンレーから再生機構に転じた村岡隆史氏(経営共創基盤取締役)が中心になって、パシフィック社の再建策を検討。そこで出てきたのが、潤沢な中国マネーを引き出してパシフィック社の資本を増強しようという案だった。この案に沿って昨年11月、パシフィック社は「中柏ジャパン」から476億円の資金を調達すると発表、九死に一生を得た格好で株価は持ち直した。
 ところがこの中柏ジャパンは、経営共創基盤の100%出資子会社で、もともとは「IGPIベータ」という休眠法人を衣替えしたものに過ぎないペーパーカンパニーだった。金融業界で「ハコ」「ビークル」と呼ばれる実態のないトンネル機関で、本当の資金の出し手は中柏ジャパン経由でパシフィック社に資金を提供する「銀億集団」や「欧琳集団」など、実態がよく分からない中国の企業10社だった。

 いったん株式市場で好感を持って受け止められた再建策だったが、パシフィック社は昨年末になって中国側からの投資が延期されたと発表し、今年1月には監査法人から保有不動産の価値を厳しくするよう言われて730億円余の純損失を計上する羽目に陥り、債務超過状態となった。中国マネーを引き出す話は雲散霧消し、今回の経営破綻へとつながった。

 振り返ると、冨山氏は高い知名度をすっかり利用されたような格好で終わり、周辺からは「いつも東大時代の旧友や留学先のスタンフォード大の友達ベースで仕事をしすぎだ。脇が甘すぎる」と冷ややかな声が漏れる。中柏ジャパンというハコを用意したのも、中国側からのアドバイザーフィーなど、このM&Aを利用して稼ごうという魂胆があったからと見られている。

 一方、好材料を発表するたびに株価を上昇させ、その後急落するという、まるで仕手銘柄的な不自然な値動きをしたパシフィック社の織井渉社長は3月10日の倒産発表の記者会見の場で、「不適切なことがあったわけではない。(希望的観測を持たせて株価をてこ入れさせたような)事実は一切ない」と強弁した。だが、前社長で創業者である高塚優氏の保有していたパシフィック社株が、担保にとっていた三菱UFJフィナンシャルグループの手で担保処分されていたことを明らかにし、「高塚氏が当社の株を担保に金融機関からお金を借り、その返済のために当社株が売られた」(小林雅之取締役)ことは認めた。それで高塚氏が得た資金は、パシフィック社へ貸しつけられることもなく、「まったく個人の取引だった」(小林氏)という。
 東京証券取引所は株価に不自然な動きがなかったどうか背景を調べている。企業再建のプリンスの名を汚す「スキャンダル」に発展する可能性も秘めている。

 レイコフ、パシフィックと続く上場不動産投資ファンド運営会社の破綻。次は1兆円ファンドを運用するダヴィンチ・アドバイザーズの先行きが注目されよう。

【神鳥 巽】

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