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トリアス久山物語『夢の始終』(45)~トリアスが残したもの(中)
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2011年10月12日 07:00

<平山社長のこと>

 株式会社トリアスの初代の代表取締役を務めた平山氏は、その後ニコニコ堂の社長を経て、経営を建て直し、とりわけ店舗の販売力回復の切り札として、2001年には、ダイエーの副社長に招聘された。

 ダイエーでの平山氏は、カテゴリーバリューセンター構想を打ち出し、従来ダイエーのレディス売場や鮮魚売場であったところを、直営ながら売場ごとに、同じカテゴリーの専門店に匹敵する売場をつくろうと挑戦した。たとえば、西松屋に対抗できる子供服売場というように。1年で20店舗以上をこのコンセプトで矢継ぎ早に改装していった。

 しかし残念ながら、これは売場のうわべだけは専門店のように飾ったが、オペレーションがついてこず、実績を上げられなかった。不況の逆風に加えて、それまでの度重なるリストラによる現場の疲弊で、作った売場を維持できないのであった。趨勢が、現場のモチベーションアップで売上回復を図れる程度のものではなかった、といってもいい。

石原商事の社長となった。ここでも平山氏は... そのような状況のなか、03年3月、平山氏はダイエーの専務を解任され、パチンコ台メーカーのサミーに転職した。さらに、06年、九州と広島を地盤とする中堅スーパーの石原商事の社長となった。ここでも平山は、石原商事を上場させる、とぶち上げている。しかし、ここは06年に倒産し、会社更生法の適用を受けた。
 平山氏は、あくまでもサラリーマン社長としての立場であろうが、それにしても残念なことだった。

 そのような経緯ゆえ、平山氏の目線から見たトリアスを書くことができなかったが、いずれ取材の機会があれば改めて原稿を起こすこととしたい。

<ショッピングセンターとしてのトリアスのこと>

 先に、都市再開発案件でありがちな床所有型ショッピングセンターの事例を挙げて、が魅力的であり続けるためには、テナントの新陳代謝が欠かせないことを逆説的に挙証した。
 店舗区画が各店主によって区分所有されている場合、テナントの入れ替わりは極端に少なくなる。その結果、どのような陳腐化が発生するか、ということを見てきた。リーシングをし続けることは実にショッピングセンター経営の根幹なのだ。

 この点、ラサールは、トリアスの運営を引き継いだ後、早速リニューアルに取り掛かった。これはハードの投資である。いっぽう、リーシング活動を実行することで、話題のテナントを誘致することに成功した。これはソフト面の投資であるといえる。これらの結果、現に集客および売上はこの不況にもかかわらず上昇に転じ、伸びつつある。
 比較的短時間にこのような成果を挙げたラサールの力量には驚嘆するべきものがある。

 ラサールの特徴は、ファンドであると同時に、リーシングなど運営面にも、通常の投資家として以上に関与して、投資物件の価値を高めようとするところである。
 しかし、投資ファンドである以上、いつかラサールがトリアスを売却し、他社に所有や管理(PM)が移管される日もくるだろう。

 トリアスと同様の規模のショッピングセンターも、粕屋のダイヤモンドシティをはじめ、珍しくなくなっている。そういうなかで、トリアスが価値を維持しつづけるためには、今後もハード・ソフト両面の投資が避けて通れない。

 トリアスが誰かに引き継がれるとき、器を引き継いだ主体が、きちんと投資、それもリーシングなどを継続していけるのか。また、それだけの力量のあるPM会社を選定し、業務委託していくことができるのかが問われるだろう。それができなくなれば、激しい競合のなか、せっかく地域の核として親しまれているトリアスも「死ぬ」ことになる。

 そうならないためにも、地域社会の側もトリアスのことには積極的な接点を持つべきだと思う。

(つづく)

【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)

東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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