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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(24)~深く静かな取付騒ぎ
経済小説
2012年5月29日 07:00

<深く静かな取付騒ぎ>
 DKホールディングスでは、2008年5月に、すべての現場の工事を中止した。
 この噂は業界内にもあっという間に広まった。当社もまた、新興デベロッパー受難の時代と無縁でない、ということを業界内に知らしめる結果となったのだ。

sora_4.jpg 当社は通常、建築工事については、着工時10%、上棟時10%、引渡時70%、残金は引渡後2カ月以内、というルールで代金を支払っていた。このため、仮に引渡の直前に当社が倒産した場合、ゼネコンは建物をほぼ完成しているにもかかわらず、工事代金の20%分しか回収できない、ということになる。年商数十億規模の中堅ゼネコンであれば、こんな現場が1つ発生すれば倒産しかねない焦げ付き額である。

 その結果、一部のゼネコンは当社に対して厳しい回収の姿勢を見せた。
 とくに、札幌オフィスビルの現場を担当していた地場のゼネコンである。ここは、10%の着手金のみで、敷地の大半を5メートル掘り下げ、基礎工事の途中の段階で工事ストップとなった。
 その後、新興デベロッパーが次から次へと倒産していくのを目の当たりにして、8月になって当社の建築工事担当の中井常務に対し、即座の請負契約解約と残金精算を要求してきた。
 これは、深く静かに潜航した取り付け騒ぎのような事態であった。

 「先日札幌に出張した際、ゼネコンさんを訪問してきましたが、非常に厳しい口調で工事の精算と現場管理費の支払を要求してきました。もう私のレベルで抑えられない状況ですので、10月中の精算をしたいと考えております。」
 中井常務は、メールで私にそのように訴えてきた。
 これに対し、私は以下のように回答せざるを得なかった。
 「10月に大型物件を売らないと、全く精算の算段は立ちません。それを約束してしまっては、かえって誤解を招きます。札幌は、もう中途売却なしに先に進まないプロジェクトになってしまっているんですよ。

 当社は、この現場を丸の内の大家さんといわれる財閥系不動産会社に引き継ぐべく商談をしています。通常なら、こんな話をお客様にするのは、風評悪化につながると思いますが、現下の情勢では、これは相当誠意のある対応だと思いますよ。」
 中井常務は、それでも諦めきれず社長・専務にも相談したようだが、やはり工事の精算については先送りせざるを得なくなった。ない袖は振れないのだ。

(つづく)
【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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