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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(28)~事業継続の戦略
経済小説
2012年6月 5日 07:00

<事業継続の戦略>
 何か大きなことを成し遂げようとすれば、必ず自ら戦略をもって臨むことが必要である。
 民事再生の場合も、それは同じだ。数十パーセントの債権をカットしていただいて、なおかつ普通に営業し、事業を存続させようというのであるから、これは普通に事業で成功するのと同じくらい難しい。
 難しい目標を達成するためには、明確な戦略と、それを実行するバイタリティが不可欠である。

 民事再生申立の時点での戦略は、以下のように整理される。

1. 不動産管理事業を存続させる。不動産販売事業(デベロッパー事業)は廃止する。
2. これから管理戸数が激減すると思われる不動産管理事業の微々たる利益から弁済をしても、債権者にまとまったお金は返せないので、不動産管事事業を売却することにより、その売却代金をあてることで一括弁済を目指す。
3. 不動産管理事業の不採算の原因であり、家賃と敷金の逆ザヤで経営を圧迫していたサブリースは解約し、一般管理に戻す。


 この戦略を達成するために当面とるべき行動としては、以下の通りであった。

1. 民事再生の申立後の保全命令により、各種支払をストップする。(一般管理の家賃送金は、当社が債務者でないため支払可。また、一定以下の金額や、事業存続に不可欠な不動産管理の取引先への支払については、可能なように計らっていただいた。)

2. サブリースのオーナーに対しては、支払ストップした家賃は、差入済の敷金から差し引いていただくようお願いする。そして、一般管理に切り替えれば次回からの送金に支障がないことを強調して、極力一般管理に切り替える。どうしても切り替えていただけない場合は、違約金を発生のうえ解約ということになるが、その時の違約金は、契約上の違約金額(当社の場合、家賃の6カ月分)ではなく、民事再生の場合、違約金額×配当率を支払えば済む。対応方針を示さない期間が続くとどうしても、オーナーが不安になりライバル管理会社につけこまれたりする。このため、極力継続していただくために、間髪をいれず申立の翌日午前から本社会議室にてオーナー向けの説明会を実施した。この説明会には黒田会長、板倉社長に加え営業系の全役員が出席してオーナーに直接応対した。

3. 入居者からオーナーへのお金の流れを死守する。このため、申立前日中に、全入居者に「当社は今後裁判所の監督下で営業を継続するので、家賃は安心していままでどおり振り込んでください」という手紙を速達で発送する。また、家賃集金を代行する会社が、オーナーからの訴追を恐れて集めた家賃を当社に送金しないことが考えられたので、これらについては幹部が交渉し、従来通りの送金を確保する。

4. デベロッパーからの撤退にともない、同事業の社員は遺憾ながら申立日から1カ月後に解雇。ただし、これにより解雇された社員は、会社都合による退職となりすぐに失業手当を受けられた。また、退職金は規定上の満額を支払った。管理系の社員(私の部下たち)についても断腸の思いで半数を解雇せざるを得なかった。

5. 残った社員で賃貸管理事業を維持するため、管理の知識のある社員を確保するとともに、オーナーの繋ぎ止めには営業系役員全員が加勢する。


 と、以上のような方針を定め実行していった。

 上記のように箇条書きにするのは簡単だが、これらすべては人的な要素が絡むことであった。とくに、何かと問題はあっても当社の社員は離職率も低く、大半の人は当社が好きというメンバーであったため、私にとってこの民事再生で最も辛かったのは、社員の解雇であった。

(つづく)
【石川 健一】

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▼関連リンク
・REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(1)~はじまり

<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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