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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(37)~ある地方銀行の妨害
経済小説
2012年6月18日 10:30

<ある地方銀行の妨害>
 ただし、ここである地元銀行からの反対意見が出た。

sora_3.jpg 民事再生法では、事業譲渡は再生計画案の承認を待たず、裁判所の許可があれば実行できる。これは、民事再生後、いち早くその事業から倒産レッテルを剥がして事業の再生を図ることを目的とした規定である。ただ、裁判所は許可を出すに当たり主要な債権者の意見を参考にすることとされている。

 その主要債権者のひとりである地方銀行が反対してきたのである。反対の理由は、本当のところはよくわからないが、21社が名乗りを上げ、大手との競り合いになった入札を「出来レース」といわれ、黒田会長が譲渡先の新会社に対して影響力を行使し続けるのではないか、という疑念を持たれた。これには、旧経営陣が新会社の価値を高めるための手伝いをして何が悪いのか、という憤慨を感じざるを得なかった。

 当社は、民事再生という、経営陣による自主再建という法律の主旨に基づいて経営再建に取り組んでいる。その成果が、新会社への不動産管理事業の譲渡による事業の存続であった。譲渡先は入札の勝者であり、譲渡金額も申し分ないものだった。それでなく、これまでどおりの本社での事業継続となり、残った社員全員の雇用も確保された。そのうえ、黒田会長が新会社に関与する意図はなく、オーナーの新会社への移行を支援する。それも、顧問等として勤務するとしても金銭的なこだわりはない、と申し上げてきた。
 それを、この地方銀行が反対するメリットは何もなく、あるとすれば担当者の私怨だけであろう。

 民事再生法は、経済的苦境に陥った債務者と債権者の権利関係を適切に調整し、もって債務者の事業または経済的再生を図ることが主旨である。それなのに、主要な意思決定の際に主だった債権者の意見を聞く、という法の規定を濫用し、債務者の再チャレンジを阻んでいるのが一部の銀行であった。

 私も、当該銀行の交渉窓口に対し、
 「この事業譲渡を認めていただければ40人の雇用を確保できますので、何とかご理解ください」とお願いした。
 担当の弁護士からも何度もお願いした。当社の社員やオーナーズクラブからも嘆願書が出た。

 結果的には、2009年4月、裁判所は、不動産管理事業を地元ファンドが支援する新会社ESTATEに譲渡することを認めた。それまでに、会長も社長も当該銀行への請願を行なった。会長は、今後ESTATEの経営に関与しないことの誓約も取られた。

(つづく)
【石川 健一】

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▼関連リンク
・REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(1)~はじまり

<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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