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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(38)~新生ESTATE稼動
経済小説
2012年6月19日 07:00

<新生ESTATE稼動>
 これらの努力の結果、旧会社DKホールディングスと新会社ESTATEとの間で、不動産管理事業を約2億5,000万円で譲渡する契約が締結され、5月1日より新会社が稼動した。
 同日付で社員のほとんども転籍した。これにより、DKホールディングスには、不動産と銀行借入が残り、人員的には4人の取締役が残るだけになり、不動産の処分と残務処理をしていくことになった。

 5月1日には、朝から銀行の店頭で新会社側と譲渡代金を決済した。
 その日も業務はいつもと同じビルで同じメンバーで稼動していたが、事業譲渡という帳簿上の作業によって、違う法人に切り替わってしまうということで、少し不思議な気がした。

m_img.jpg 会社が倒産すれば当然に信用を失い、不動産管理事業では物件の管理を託してくれるオーナーが逃げていくことになる。当社でも、当初1万1,000戸あった管理物件が、7,000戸になった。ただし、減った分のうち、2,000戸は東京・名古屋の物件であったから、福岡の物件としては9,000戸から2,000戸減った、というところだろう。
 民事再生を申し立ててから、地元大手の管理会社はDKホールディングスの管理物件を奪い取る特別チームを作って攻めてきた。他にも、旧社員を取り込んで管理を獲得しようという動きも見えた。もっとも悪かったのは、X取締役が自分の懇意顧客の物件を数棟無断で持ち出したことだ。
 しかし、そのような逆境を乗り越え、役員・社員一同、オーナーのつなぎ留めに当たることで、管理戸数の減少をこの程度に抑えられたのだった。

 DKホールディングスより少し早く民事再生となった角美という中堅不動産会社の場合、家賃送金を入居者からオーナーへの直接振込に切り替えた結果、管理物件の大半を失ってしまった。これに対し、当社の場合は80%近い残存率である。これを達成できた要因は、申立直後の行動指針としてカネの流れを守ることが最優先事項と気づき、それを実行する戦略まで事前に考えていたことであろう。

 そういうことを思い出しつつ会社に戻り、本社の社長室横の管理部門フロア中央に陣取っていた私のデスクを、新会社の専務になった稲庭君に譲り、私たち旧役員は、面積の小さなフロアに移った。
 これで、私たち旧経営陣は、事業の資金繰りを維持し、社員の雇用を守っていくという責任から解放された。昨年11月の民事再生申立からちょうど半年。これまで季節の移ろいなど感じる余裕はなかったが、気がつけばツツジが鮮やかなピンクの花を咲かせていた。

 これからは新会社に間借りして、不動産を換金処分して債権者への配当に向けて残務処理に取り組んでいくのである。

(つづく)
【石川 健一】

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▼関連リンク
・REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(1)~はじまり

<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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