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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(44)~X社長との面接
経済小説
2012年6月27日 07:00

<X社長との面接>
 いくら調べても具体的な中身が見えてこないX社――。

b_6.jpg そこで私は、紹介会社のキャリアコンサルタントにも、あらためて情報を求めた。X社を担当している営業マンを紹介してもらい、どのような会社かヒアリングしたのである。
 それによると、社長は創業経営者1代で売上140億円の企業を作り上げたが、後継者がいなかった。息子がなく、娘2人は会社を経営する意向はない。そして、社員にも後継候補となるような人材はいないということだった。
 しかし、それゆえに社長は社内体制を整える必要を痛感しており、そのためには有力な幹部を採用したい、とのことのようだった。もし、採用となれば地元企業としてはかなりの高待遇も提示するだろうとのことだった。

 そのような予備知識をもって社長面接に臨んだ。

 事業継承の問題については、率直に質問したところ、ほぼ事前の情報通りであった。そしてそのためには、社内の体制を整えられるような管理面の幹部が必要との話であった。そして、社長は、全国制覇を達成するという明確なビジョンを掲げており、そのためにも人材が必要なのだ、と語った。

 ひとつ、違和感を覚えたのは、話がM&Aにおよんだときだった。

 私は、今後の戦略としてM&Aもお考えですかとうかがった。すると社長は、1度だけ小さな会社を買ったことがあり、「今後もぜひやりたい」とのことであった。ただ、社長は、「M&Aは優秀な人材を獲得するチャンスだ」と述べたのである。

 このX社のような業態では、営業ノウハウはどこも似たり寄ったりであり、M&Aで求めるものはもっぱら「商権」であった。だから、M&Aで会社を買った場合は、その商圏をまず獲得したうえで、旧経営陣・幹部などを放逐するのが一般的である。それをこの社長は、人材が不足だから全国制覇ができず、M&Aをしてでも人材がほしい、という。
 「もしかしたら、この会社は人材を育てられていないのではないか」と思った。

 そして社長は、私がDKホールディングスで人材育成においてどのようなことをやっていたかを根掘り葉掘り聞いてきた。新卒者採用をしているか、その後の研修をどうしているか、誠実な社員を育てるにはどうするべきか、といったことである。私は、これまでの経験を説明した。

 このようにして1時間の面接が終わった。初対面の私には「全国制覇を達成するために、人材がほしい」という社長の言葉は意気に感じたのだが、どうも、どんよりと濁った「もやもや感」がぬぐえなかった。

 さらに1週間後、改めてキャリアコンサルタントから電話があった。

(つづく)
【石川 健一】

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▼関連リンク
・REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(1)~はじまり

<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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