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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(46)~「両方ともブラックですね」
経済小説
2012年6月29日 07:00

<「両方ともブラックですね」>
 「実は、今回X社という会社から内定をもらったんですか、何かこの会社に関して悪い話を聞きませんか?」
 私はこのように知人の何人かに電話をしていった。
 「いや、とくに聞きませんよ。」
 「あのCMを盛んに流している企業ですね、よかったじゃないですか。」
 インターネット上にも、X社に関しては取り立てて悪い情報はなかった。

 しかし、知人で人材紹介業を経営しているS氏だけは唯一違った。私は、他の人に聞いたのと同じように、X社について聞いてみた。
 「Sさん、ご無沙汰しております。実は、今回DKホールディングスの残務処理に目鼻がついたので、転職することになりまして、X社というところから内定をもらったんですが、ここって何か問題ないですか?」
 すると、S氏は即座に答えた。
 「そこはブラック企業ですから、止めたほうがいいですよ。」

bi.jpg 私は、目の前が真っ暗になり、椅子から転げ落ちそうになった。
 「えっ、そうなんですか。真面目な会社と思っていたんですが。それは、またどうして?」
 「当社でも以前は、X社に人材を紹介しておりました。たしかに、ここの社長はとても熱心に仕事をされる方なんですが、しかし、紹介する人、する人、入社して最初は、ああいい人を紹介していただいてよかった、という評価を受けるのですが、そういう人たちがすべからく1、2年で退職してしまうんです。だから、私はもうX社とは取引しないことにしております」と、S氏。

 私がもっと早くS氏の意見を聞いていればよかったのだが後の祭りだ。
 「そうですか。それでは、ちなみにY社という会社からも内定を得たんですが、こちらはどうですか」私は、さらに恐る恐る突っ込んで聞いてみた。
 「どちらともブラックですね。Y社は、とても仕事がハードなうえに、社長の人間性に問題があります。入社した人が本当に続きません。論外ですね」と、S氏は淡々と答えた。

 「Y社のことは、インターネットにもいろいろ書かれていました。しかし、このX社はそういうことはないし、大手の紹介会社から紹介を受けたので、それがブラックというのは正直ショックですよ」

 「そういうブラック企業は、大手の紹介会社にとってはいいお客さんなんです。何しろ、人が辞めれば、その穴を埋めるためにまた紹介依頼が来ますから。でも、地元で商売している当社としては、逆恨みなどされたくないですから、そういうところにはご紹介しないようにしています。そういえば以前転職をお世話した方も、X社を辞めた方でした。よろしかったらご紹介しましょうか」

 結局のところ、この不況下で求人しているのはブラック企業だけ、ということであった。

 しかし、X社は、そうそう悪評が流れているわけではなく、すくなくとも財務諸表からすれば真面目な会社という印象はあった。それに、1次面接をしてくれた常務も、営業スマイルとはいえ悪い印象はなかった。そこで、私は、住宅ローンも抱える身で、ここで入社を見送ったとしても、DKホールディングスの役員報酬も12月しかもらえない。もしかしたらそんなに変な会社ではないのではないかという淡い期待を抱きつつX社への入社を決めた。

(つづく)
【石川 健一】

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▼関連リンク
・REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(1)~はじまり

<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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