<ブラック企業と二束のわらじ>
2009年12月となり、DKホールディングスの民事再生手続はいまだ3件の不動産の処理が済んでおらず後ろ髪を引かれる思いであった。が、債権者の理解を得るためには、いつまでも弁済原資を役員報酬で食い潰すわけにもいかず、私は、非常勤となった。
岩倉社長と中井常務は、まだ3つの不動産の処分が残っており、うち2つはゼネコンの工事が完成していなかったため、継続して取り組むこととなった。
私自身は、非常勤ながら、代理人弁護士との窓口、そして法的手続関係については継続して取り組み、DKホールディングスの最後を見届けることとした。このため、夜8時くらいまでX社で執務し、その後、DKホールディングスの事務所に立ち寄り、月に1回の裁判所への報告資料の作成や、最終弁済に向けての資金繰りの見積などに当たった。
X社での日々については、未だ社内にいる人に迷惑がかからないよう公知の情報を記載するにとどめたい。
X社は、その創業者社長が、資金繰りの確実な業態として日銭商売であるミネラルウォーターの販売に目をつけ、サーバーの設置先を健康ランドなど店舗に絞り込んだことで売上140億円の企業に成長していたが、その後そのような業界の市場縮小に伴い4年間、前年割れを続け、売上は100億円前後まで落ちていた。
ただ健康ランドの業界のピークは平成一桁時代であったが、その後もしばらく成長を続けることができた。これは、ひとえに九州有数のスーパー銭湯チェーンに独占自販機業者として食い込んでいたからであった。
このチェーンはいまだ新規出店のペースを落とさず、その地盤の福岡県から南九州への新規出店を続けている。しかし、業界規模が縮小する環境では、この大手チェーンと言えども出店後、不振に陥り、撤退するケースも見られるようになっていた。
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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。
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