ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

経済小説

REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(56)~元常務 失業する
経済小説
2012年7月13日 07:00

<生涯初めての失業>
img_6.jpg 2010年10月20日、私は、X社を退職したことにより、1989年4月に新卒者として大手スーパーに入社して以来初めて無職の身となった。その後、契約社員としていちおうの再就職を果たしたのは1月であり、正味3カ月間を完全な無職者として過ごすことになった。

 社会人として22年間、密度の高い仕事をさせてもらった。
 DKホールディングスを倒産させてからも、(私は役員であったので、倒産させた、と一人称で述べることにしている。)きちんと残務処理を行なった後であれば、何か仕事はあるだろう、と信じてやってきた。
 しかし、リーマンショック後の不況が予想より厳しかったからか、私自身の行ないが悪かったからなのか、私の履歴書には、ブラック企業の短期勤務という負の遺産が残ることになった。

 無職者としての挫折感は、私の真鍮に深いトラウマとなって残った。
 ブラック企業での辛い出来事、無職となり引き裂かれるプライド、これらは強烈な残像となって今も私の脳裏にある。そのことは早くから本稿のように書き残そうと思っていたが、傷に塩をすり込む感覚がいつまでも消えず、退職後1年ほどは遅々として筆が進まなかった。
 それでも、同じように苦労をしている人たちのために駄文を書き連ねていこうと思う。

 転職活動は、退職に先立ち8月より開始していた。
 私は、DKホールディングス時代にお世話になった人材紹介会社の人に1年が経過した現在の求人状況を聞いてみた。

 「あれから1年たちますが、福岡での求人の状況はいかがですか?」と私は尋ねた。
 「そうですね、少しづつですが、上場を目指す会社の話も聞かれるようになっています。時々そういう求人も出ていますよ」とキャリアコンサルタントは言った。

 私は、少し元気付けられた。3週間に1件くらい、新たな企業との面接に臨むことができた。不況が続くなかでは上乗だった。

 家内には、やむを得ず退職する旨は事前に知らせていた。最初は、
 「我慢して勤務して、次を決めてからの転職にするべきやないと」と頑強に主張していた。
 無理もない。
 しかし、いろいろないきさつを説明するにつれて退職やむなしと理解してくれた。それでも家計を預かる責任から、いろいろ言ってくる。
 「退職したらどうするの」
 「そりゃ、転職活動をするに決まってるよ」
 「そんなこといったって、1日中転職活動をするわけではないでしょう」
 家内は、私に1日中自宅にいられたらたまらないのだ。
 「X社でいろいろあったんでDKホールディングスのことが遅れているので、少し忙しくなる。債権者が不在で返せない配当金を法務局に供託しなければならないから。それが全部済んでようやく解散登記ができる。そこまですれば99%終了だからね」
 「ハローワークにはいつ行くの」
 私は、ハローワークのあのどんよりとした雰囲気に恐れをなして、ハローワークに行く手続をついつい先延ばしにしていたのだった。そこを家内の畳み掛けられ、
 「まだ決めていないけれども、行くって!」とつい、滅多にないことだが声を荒らげてしまった。

(つづく)
【石川 健一】

≪ (55) | (57) ≫

▼関連リンク
・REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(1)~はじまり

<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


※記事へのご意見はこちら

経済小説一覧
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル