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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(58)~離職票(後)
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2012年7月18日 07:00

sora_19.jpg 私は、私自身の今後の職業生活のためにも、またDKホールディングスの残務処理を全うするうえでお世話になった、という意味でも、先に述べたように会社とことを構え、わだかまりを残してX社を辞めるつもりはなかったので、離職票に記載する離職理由は、純然たる自己都合とした。
 X社の管理担当役員が私に退職日の繰上を持ちかけたのは明らかに理不尽な会社の働きかけだったが、それにも目をつぶることにした。

 だから私は、最初から失業手当を受給することは考えていなかった。
 しかし、家内はしきりに失業手当のことを口にする。

 「20代の時、私の同僚は知り合いに職業安定所の人がいたとかで、失業手当がすぐ出るように離職理由の便宜を取り計らってもらっていたわよ。何か抜け道があるっちゃないと?」

 私は、正直、多少の預貯金の目減りがあってもハローワークに行きたくなかった。他社の知人でリストラに遭ってハローワークに行った人からもいろいろとその雰囲気のことは聞いていた。正直、パリッとした気分で転職活動をしているのに、あの場に居合わせるだけで元気を吸い取られ、あの人たちの仲間入りを私もするのか、と思った。

 実はもう、仲間になっているのだが。

 しかし、家内は毎日のように失業手当のことを言う。家計を預かっている家内に言われたら私も受けざるを得ない。それに、今さら、雇用保険の保険期間が不足しているなどと打ち明けた日には、卒倒するだろう。

 そこで私は、失業手当の手引書を見ていろいろと考えた。
 たまたまこの7月、東京の父が死亡し、残された母も要介護度5で、これを近所に住んでいる妹夫婦が看ていた。
 そして、給付制限期間なくして、より短い被保険者期間で失業手当を受給できる「特定理由離職者」の理由のひとつに「家庭の事情の急変(父母の扶養、親族の介護等)」というのがあるのを見つけた。私自身も、福岡で職を見つけられなければ東京で就職することも考えていたので、この際東京に就職して親を介護する、このストーリーで一度ハローワークに行こうと考えた。

(つづく)
【石川 健一】

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▼関連リンク
・REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(1)~はじまり

<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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