<第六章 谷本頭取の時代>
クーデター未遂事件(14)
谷本専務と一緒に会食した竹下は、翌日の朝、羽田から福岡空港へ飛び、正午過ぎには海峡市の維新銀行本店に戻った。
竹下は山のように積まれていた稟議関係を処理すると、早速事務管理部門担当の宮下幸夫取締役を応接室に誘った。
竹下はゆったりした口調で、
「昨日、地銀協の会合に出席した折、首都圏本部に寄って谷本専務にお会いした。植木頭取はポスト植木に備えた体制づくりを考えて、笹川常務を通じて谷本専務に引退を打診してきたという話は、君の耳にも谷本専務から入っていると思う。そこで谷本専務から重ねてお願いと言うか協力の要請を受けた。
その骨子の一つは取締役会出席者の過半数である8名の協力者を確保することにある。組合関係では僕と宮下取締役、それに河辺毅常務と城戸訓取締役に是非協力してもらってほしいとの依頼を受けた。二つ目はもし8名以上の協力者を確保することができれば、植木頭取に取締役会長になってもらい、谷本専務が頭取に就任することを打診する。
昨年はすんなり改選されたため何ごともなかったが、今回は本当に退任の要請を受けており、それを阻止するために是非協力して欲しいと言われている。
考えてみればこうして我々が取締役になれたのも、谷本専務から組合幹部に推薦されたことから今の地位があり、今回この様な谷本専務のために一肌脱がないわけにはいかないと思う。宮下君も同じ考えだろうと思っている。是非一緒に協力しようじゃないか」
と、身振り手振りを交えて説得した。
宮下は、
「常務、そうすると組合出身の取締役4名は昨年のメンバーですかね。同じ組合と言えば、昨年6月に新任の取締役となった桜木高志取締役も組合の委員長出身ですが、声は掛けないのですか。それと過半数の8名を確保するにはあと3名必要となりますが、これも昨年のメンバーと一緒なんですか」
と訊いた。竹下は、
「うん 桜木君については微妙なんだよね。昨年植木頭取から取締役に任命されて間がないので、8名が固まれば声を掛けないでおこうと決めている。ただ、賛同者が過半数に達しないことも考えられるので、その時は谷本専務が声を掛けることになっている。それと残りの3人、西京支店の佐藤芳信常務、東南支店の木村敬司取締役、常盤支店の湯原雅広取締役にも、谷本専務が今回の経緯を良く説明して、昨年と同様再度協力をお願いすることになっている」
と、述べた。
「この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません」
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