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経済小説

「維新銀行」~第一部 夜明け前(83)
経済小説
2012年7月20日 07:00

<第六章 谷本頭取の時代>

クーデター未遂事件(15)

bgns_6.jpg 宮下はじっと目を瞑って思案している様子であった。竹下も同じ疑念を持ったことを想い出した。暫くの間沈黙が続いていたが、竹下は宮下の顔に目をやりながら、
 「恐らく考えていることは同じだと思うんだが、今回は昨年の谷本専務再任の時と違うような気がする。あの時は植木頭取が元気な時での禅譲計画であったが、今回は植木頭取が自分の意思でポスト植木のために、谷本専務に退任を要請してきており、昨年とは状況が違ってきている。つまり膀胱がんの発病が原因であっても、植木頭取が自から身を退いて、若返りによる新体制を確立しようとしている点だ。

 確かに超ワンマンの植木頭取に対して多くの役員から不平不満が噴出していたし、長期政権に対して人心一新を望む声も役員の中だけでなく、行員からも多く出ていた。 しかし今度は前回と違って、頭取自身が退任を決意したことを高く評価する者も出てこよう。そうなると、谷本専務の退任阻止の協力要請に難色を示す取締役も出てくるのではないか、また谷本専務は自分の保身のために動いているだけではないのかとの見方をされる恐れもあり、その点を谷本専務は危惧をしていた」
と、宮下が懸念していた点に触れた。

 宮下は、
 「確かに前回と違いますね。あの時の行動は、谷本専務が維新銀行にとって大切な人材だから、役員の多くが再任を希望するための行動であったと思う。しかし今回は新しい体制を築くために任期途中ではあるが勇退を迫られている。維新銀行の将来にとって谷本専務を頭取に推挙するのが良いのか、それとももっと若い世代にバトンタッチするのが良いのかを問われる、難しい選択になると思います。我々は谷本専務に頭取になってもらいたいとの考えでいますが、第三者的な立場から見ると、植木頭取が谷本専務を頭取に指名するのか、それとも若手に譲るのかは人事権のある植木頭取に任せた方が良いと考える者が出るような気がします」
 と、竹下と同じ危惧を持っているとの考えを述べた。

 竹下は、
 「それはそれとして、今更そんなことを心配していたら前には進めなくなる。その心配は思い切って払拭して谷本新頭取実現のために、是非お互いに協力してやろうじゃないか。もう後戻りはできないよ」
 と同意を促す言葉を発した。大きく深呼吸をしてから宮下は、
 「一緒に協力してやりましょう」
 と、はっきりとした口調で返事を返してきた。

(つづく)
【北山 譲】

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「この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません」

▼関連リンク
・「維新銀行」~第一部 夜明け前(1)


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