<高速バスでの東京訪問>
前回の転職活動では、地元での転職を意図したが、今回は、東京の企業についても応募していくことにしていた。そうしていたら、あるとき東京本社のジャスダック上場の飲食業チェーンの経営企画部長職の紹介があり、同社の管理担当役員の面接を受けることとなり、東京に出向くことになった。
私は、東京に出向いての就職活動をすることは覚悟していた。
そして、その交通手段としてはもっとも安価な高速バスを利用することにした。最近は、東京―福岡間を飛行機で往復すると6万円以上する。新興キャリアのスカイマークで4万円くらいだ。早期に予約すればもう少し安いが、企業の面接というのは、その性質上、どうしても早期予約というわけにはいきづらい。
この点、高速バスであれば往復割引運賃で2万7,000円と極めて安かった。
東京-福岡間の高速夜行バスは、私が大学を卒業して間もない1990年頃に、西日本鉄道と東京の京王電鉄の共同運航で開設された。
片道の運行距離は約1,500キロ。運行時間は約17時間。文句なしに国内で一番長距離のバス路線で、同区間の公共交通機関の一般的な運賃としてはもっとも安い。(これよりさらに安いものとして、いわゆるツアーバスがある。これは、扱いとしては団体旅行の貸切バスなので、公共交通機関とはいえないが、毎日何本も運行しており、インターネットで誰でも簡単に予約ができる。しかも福岡―東京ディズニーランドというようなニーズも捉えてきめ細かな路線を展開している。また、公共交通機関としての路線バスも11年冬になって、福岡-さいたま便が誕生し、運行距離でトップとなった。)
「はかた号」と名づけられたこのバスに乗るには、西鉄バスの予約センターに電話をして予約をする。予約センターでは中年の女性が申込を受け付けてくれるが、これが一筋縄ではいかないローテクである。
私の場合は福岡から東京に行って、東京には朝着き、午後に面接をこなしてその日の夜のバスでまた福岡に帰ってくるというパターンなのだが、福岡出発の往路は西鉄のコンピュータに座席が入っているのか、その場で空き確認ができて席を押さえられる。ところが東京発の復路は、パートナーの京王電鉄で券を売っている関係なのか、最新の予約状況がコンピュータに入っておらず、折り返し電話で回答、というやり方をとっている。
座席は3クラス制になっていて、窮屈な一列4人のシートならばもっと安いのだが、私はさすがに中間クラスを取った。日本社会も中間層が失われつつあるのかな、私はその変化の最前線にいるのかなあと思いつつ、なお中間層にすがりつこうとする自分が情けなく感じた。
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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。
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