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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(65)~体をなまらせないために
経済小説
2012年7月27日 07:00

<体をなまらせないために>
 私は、無職の期間中も、生活のリズムを維持することに努めた。

sora_8.jpg 朝は5時半に起床して、新聞などを読みつつ、6時過ぎに小1の娘を起こす。娘の朝の作業をきちんとこなさせることは、共働きゆえ保育園に行き始めた幼児の頃から一貫して私の役割だった。起こしたら、食事・ピアノの練習・歯磨き・着替えなどをきちんと済ませ、学校へと送り出す。小1ともなれば、いちいち指図せずとも自分でやるようになり、ずいぶんと楽になったのだが。

 そういえば、私が会社を辞めたことを娘に伝えるか否かで迷った。
 そして家内と相談の結果、伝えないことにした。娘は案外と社会性を身につけていたため、無用の心配などの悪影響が出ないことを願ってである。

 また、頭脳をなまらせないことと、昼間の居場所を作ることが必要だった。

 ちょうどそのとき、知人より、経営している会社(とはいっても事務の女性1人を置いているだけの個人事業主のようなものだが)で、3,000万円ほどの資金調達が必要との相談を受けたため、渡りに船と思い、お手伝いをすることにした。
 事務所の机を与えてもらい、その会社の事業内容などを決算書や契約書関係から理解し、長期の資金繰り計画を作り上げ、それをもとに、日本政策金融公庫に融資を申請するための書類を作り上げた。

 内容は、設備投資であったが、相手先との条件交渉などを踏まえながら1月に融資を申請した。その結果、すんなりと3,000万円の融資審査がおり、喜ばれた。が、私は、資金調達の達成感よりも、毎朝事務所に「出勤」できることがありがたかった。

 よく、会社をリストラされたがそれを家族に打ち明けられず、スーツを着て当てもなく家を出て、公園で時間をつぶした、というような話を聞くが、ひとつ間違えれば、それを地でいくような話である。

 もう1つは、12月に入った頃だったか、DKホールディングスの民事再生後にLupraという会社を設立し、2~3人のスタッフで頑張っていた黒田会長から電話があった。

 「最近どうね!」携帯電話の向こうに懐かしい張りのある声が聞こえた。
 「まだ決まっていません。いくつか面接も進んでいますが。」と、私は答えた。
 「この間話をしていた賃貸管理事業の立ち上げをそろそろ真剣に考えようと思っているが加勢してくれんね」
 「暇ですから、何でもやりますよ」
 こうして、私は、もうひとつの居場所を見つけた。ミッションは、新たに賃貸管理事業を立ち上げる事業シミュレーションである。もともと経営企画を中心にやってきた私には、一番面白い仕事である。

(つづく)
【石川 健一】

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▼関連リンク
・REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(1)~はじまり

<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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