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REBIRTH 民事再生600日間の苦闘(67)~奈落の底
経済小説
2012年7月31日 07:00

<奈落の底>
 それだけではない。
 1月中旬のある夜、私は民事再生体験記の原稿を書いていたが、そこに家内が声をかけてきた。

 「来年の学童保育の申込書がきているわよ、2月に出さなきゃならないのにいったいどうするつもりなの?」
 学童保育とは、共働きの家庭の子供を放課後夕方まで預かってくれるところだ。その利用は保護者の共働きが前提なので、両親の勤務先を書く欄があるのだ。

 「・・・何とかなるだろう。」
 「何とかなるっていっても、何がどうなるのよ。」

 私は、心底家内に申し訳なかったが、かといってどうなるものでもなかった。こういうとき、私は無言を決め込むことに決めていた。私が次の職を決めること以外に、何をいっても無駄だからだ。

gaitou.jpg 私の家内は毎晩、子供が寝たあとに台所で家計簿をつけていた。
 それはこれまでも変わらないのだが、最近私はときどき家内が、我が家の預金通帳をじっと見ているのに気がついていた。10月にX社の最後の給与が振り込まれたのを最後に、私の収入が途絶えていた。当面生活に困らない蓄えはあるとはいっても、家内は、毎日通帳をチェックすることで、預金残高がじりじりと減ってきていることを実感していた。当然に今後どうなるのか、不安は増すだろう。

 まさに追い詰められる気分だった。
 手ごたえを感じていた2社の選考がストップしたうえに、家内の神経にかかる負担からしても、そろそろ贅沢をいうのは辞めて、どんなところでもいいから収入を得ることを考えよう。眠れないベッドで、そのように考えた。

(つづく)
【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)
東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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