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経済小説

「維新銀行」~第一部 夜明け前(109)
経済小説
2012年8月27日 07:00

<第六章 谷本頭取の時代>

クーデター未遂事件(41)

 6月26日午前10時より、株主総会が維新銀行本店8階の講堂で開催され、その後に開かれた臨時取締役会議で、植木代表取締役会長、谷本代表取締役頭取体制がスタートした。今までの独裁体制から二頭体制への始まりは、植木にとっても谷本にとっても、お互いにお手並み拝見という睨み合いの状況であった。あたかも陰極と陽極のように反発し合う二頭体制であった。しかし時の流れとともに実質的に維新銀行の舵取りを担うようになった谷本は、次第にその権力を手中に収めていった。

sora_7.jpg 一方植木は、ホルモン療法により前立腺がんは小康を保っているものの、いつ他の臓器に転移するかわからない健康状態にあり、昔日の面影は次第に翳をひそめていった。
 そのため人事権を握っている植木としても役員を大幅に入れ替えることはできなくなった。谷本と頭取を交代した翌年の役員人事は、植木陣営に属していた森谷賢一郎常務の退任のみに留め、新任取締役候補に人事部長から大阪支店長に転出していた小池和寿を指名した。
 小池は13代の組合委員長経験者であったが植木と同窓の西部大学の出身者であり、植木頭取の下で人事部長として働いた実績が評価されての抜擢であった。その小池も取締役となって小倉支店長に赴任したが、植木亡き後、第五生命の山上正代の保険勧誘に協力しなかったことが谷本頭取の逆鱗に触れ、2期4年で取締役の座を追われた。
 
 植木会長は就任して2年後に改選期を迎えた。体調はおもわしくなかったが植木は続投を表明し、退任は、2年前谷本の任期途中の退任には反対したものの、積極的に谷本支持の態度表明をしなかった佐藤芳信専務一人であった。
 中立派であった佐藤は銀行からの再就職の斡旋を受けることなく、英語が堪能で維新銀行の国際部長としての経験を買われて、若者向けの低価格商品を武器に全国展開し、急成長を遂げた衣料品チェーンの会長にスカウトされた。

 植木は会長に座った当初は人事権を行使していたが、谷本頭取体制が浸透していくにつれ、谷本の人事案を追認するようになり、実質的には谷本が代行するようになっていた。
 そのため谷本は、佐藤専務の後任の取締役候補に栗野和男地域開発室長を指名する案を提示したが、筆頭専務の笹川は栗野が谷本の腹心であり、役員間の勢力バランスが崩れると植木に進言。植木は人事権を盾に栗野を取締役にすることを認めなかった。予想しなかった植木の反発に驚いた谷本は、国際部長であった谷野銀次郎を推薦。植木は頭取時代に人事課長であった谷野を取締役とする人事案を了承した。
 谷野は植木会長が指名した最後の取締役となった。谷野の取締役指名は中立派の佐藤の退任に伴うバランス人事となった。
 
 その後植木は前立腺がんが他臓器に転移したため長期の入院を余儀なくされ、人事権は谷本が握ることになった。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。

次回110回目をもちまして、「維新銀行 第一部 夜明け前」は、最終回を迎えます。その後、間を置きまして、第二部の掲載を予定しております。


▼関連リンク
・「維新銀行」~第一部 夜明け前(1)


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