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福岡市政の闇 顧問・後山泰一氏(8)
行政
2013年4月13日 07:00

第3章 広報戦略アドバイザーという隠れ蓑(後)

<消えた公募情報>
 業務委託の公募情報に関し、福岡市ホームページでの公開のあり方が歪んでいることが浮かび上がった。
 前回までに「アイランドシティのPR業務委託」に関して、福岡市顧問で会社社長の後山泰一氏が利害関係者とみられて仕方がないばかりか、審査について門外漢であることを示した。この「アイランドシティのPR業務委託にかかる事業提案」は2012年10月に公募されたが、この公募情報は現在、福岡市のホームページに掲載されていない。
 福岡市では、業務委託などのプロポーザルやコンペを公募で実施する場合、公募情報がホームページの「公募(事業者向け)」情報コーナーで公開される。通常は公募時と結果公開時の2回掲載される。
 しかし、同時期のほかの公募は掲載されているにもかかわらず、この公募については情報も結果も掲載されていない。

<行政の一方的都合で長期間PR>
0_f.jpg 調べてみると、今回後山氏が選定委員を務めた9件のうち公募されたのが7件。そのうち「アイランドシティPR業務委託」など4件が結果も含めてホームページから消えているのがわかった。
 市長室広報課に取材すると、ホームページに公開する際、担当課が公開日と終了日を指定(終了の期限を設けないこともできる)しており、終了日になればホームページから消える設定だという。

 結果が公開されてから何日後に掲載が終了するかは、業務委託や担当課ごとにまちまちである。各課に取材した結果は以下の通りだった。

 広報課では、業務委託の内容に応じて掲載終了日を決めている。たとえば、戦略的広報に関する業務では、「初の試みなので年度末まで掲載した」(広報課)した。今回の9件以外では、City Wi-FiなどのPR業務の場合、「City Wi-FiのPRにつなげたいので長期間掲載した」(同)という。行政側がその事業そのものをPRしたい意図が大きく働いている。
 市長室広報戦略課では、「応募については締め切りまで。結果については、第一義的には応募者向けであり、応募者には別途通知しているので、数日間後に掲載終了のときもある」という。

 市長室の広報担当関連と対照的だったのが、経済観光文化局大規模史跡整備推進課だ。「基本は事業者向けのページだが、当然一般市民も見るので、期限を設けることもできるし設けないこともできる」として、特段の期限を設けずに掲載してきたという。「ルール化は考えていきたいが、さきほどふれたように、一般市民も見るので、少なくとも当該委託業務が継続している間は掲載していきたい」としている。
 広報戦略課は、「市民が公募結果を知るためにも長期間掲載すべきではないか」との質問に対し、「今後考えたい」として、市民目線の必要性を認めている。

<契約課「透明性の確保のため公表」>
 福岡市の入札契約情報と比較すると、さらに違いが明らかになる。
 財政局契約課で契約した入札・契約情報については、1988年以降の工事、契約、物品などの入札検索結果を検索できる。このようなシステムが導入されたのは、2001年頃の入札制度改革の結果だ。
 当時、筥松第4ポンプ場工事をめぐって、総務企画局長が逮捕されるなど、福岡市で談合が常態化しているとされ、全国でも元建設大臣が逮捕されるなどゼネコン疑惑が噴出していた。

 市契約課によると、入札制度改革のなかで「手続きの透明性の確保のため公表を実施した。行政文書の保存期限があるが、ホームページのデータをそれに合わせて消すのではなく、データ量の許す限りむげに消すということはしていない」という。市民による直接監視を視野に入れている。

 疑惑を持たれている後山氏が、契約課の入札契約に比べて、透明性確保の甘い業務委託に目をつけたと見られても仕方あるまい。

<自治体広報が"企業CM"に変質>
 広報(PR)は、米国で民間企業活動で生まれたものが行政に移し替えられた手法だが、民間企業と自治体ではその役割が違っている。
 もともと日本では自治体の広報(PR)は、戦前の中央集権国家では存在しなかった。戦後GHQが自治体にPR部門を設置するように指示したのが始まりである。近年では行政が住民参画型社会への変化を意識して、一方通行的な情報伝達ではなく、市民が主体的に自治体の運営に参画するためのものと位置付けるようになり、企業のPRとは役割の違いが際立ってきた。
 自治体に経営感覚が求められていても、企業経営の主体は社長や取締役会など経営者だが、自治体経営の主体は住民だ。民間企業がCMを制作するのとはわけが違う。

 広報課も広報戦略課も、市長室広報戦略室にあり、後山氏は広報戦略アドバイザーとして市顧問を務めており、一番密接な部署になる。
 後山氏は、未発表資料を講演で得意気にしゃべったり、情報公開請求内容を地元紙記者に漏らすなど、行政情報を好き勝手に取り扱ってきた。住民参画や透明性確保、守秘義務の視点がないことは明らかだ。
 これ以上、後山氏が顧問として広報戦略アドバイザーを続けていたら、高島宗一郎市長の行政パフォーマンスと相まって、自治体広報が一方的に都合のいい情報を流す大本営発表に変質しかねないだろう。

(第3章・了)
【特別取材班】

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