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井筒屋、借入金300億円を集約~重いツケを回された山口FGの苦悩
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2013年4月16日 10:54

 井筒屋(北九州市、影山社長)は12日、2013年2月期の決算を発表した。売上高は主力の衣料品販売が昨年の夏以降低迷した影響を受け、前期比1.1%減の872億円と、4期連続の減収となった。経常利益は11.5%減の25億3300万円と4期ぶりの減益となったが、当期純利益は14.3%増の21億7,900万円で2期ぶりの増益となった。配当は無配を継続。

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<金融機関借入の再編について>
 影山社長は記者会見の席上、経営再建のため返済を猶予されていた金融機関17行からの借入残高約300億円について、借入先を山口フィナンシャルグループ(山口FG、山口県下関市)傘下の3行に一本化したと発表。3行からの短期借入金300億円の内訳は、山口銀行115億円(他行肩代わり資金)、もみじ銀行50億円(他行肩代わり資金)、北九州銀行135億円(既存借入)。
 山口銀行から115億円、もみじ銀行から50億円の合計165億円を他行肩代わり資金として調達。従来の主要取引行であったみずほ銀行、福岡銀行、西日本シティ銀行などからの借入金全額を2月末までに返済した。

<今回、山口FGグループに一本化した大きな理由について>
 井筒屋は山口FGの要請を受けて、同行が整理回収機構の企業再編ファンド機能を活用して63億円の金融支援を行なっていた「ちまきや」と07年9月に業務提携して執行役員 1人を含む幹部3人を派遣し経営改善策を模索した頃から、主力銀行間の足並みが乱れる要因となった。しかし、地方百貨店が単独で経営しても商品を充実させることが困難となり、07年11月14日に記者会見し、「ちまきや」の買収を発表。08年8月31日で、「ちまきや」を閉店。ちまきやを子会社化し、山口井筒屋(山口本店、宇部店)として08年10月に開業。
 主力行の一角であるみずほ銀行・福岡銀行・西日本シティ銀行は、もともと井筒屋本体の経営が厳しい状況のなかで、山口銀行の要請を受け入れ「ちまきや」を買収したことから一層態度を硬化させることになった。
 山口井筒屋は借入金全額を山口銀行から調達したことから、井筒屋グループでの融資シェアは山口FGがトップとなり、協調融資の足並みが乱れる要因となった。また、「ちまきや」を引き受けた見返りに井筒屋のカード発行会社(株)井筒屋ウィズカードを山口FGが引き受けたことも、各行に不信感を持たせる要因となった。
 井筒屋が山口FGとの関係を強めていったことから、山口FGを除く取引行の間からは、今年度からスタートする3カ年の中期経営計画や、今後の返済条件に対する不満や不良債権の減損処理を急ぐよう求めるなどの不協和音が表面化。
 井筒屋は旧そごう店舗の買収などの投資負担が重なって経営不振となり、2010年から返済期限を延長する金融支援を受けていた。しかし人員削減や給与カットなどの合理化などにより、対象となる銀行借入は367億円から13年3月期末で約300億円に圧縮。金融機関との最低20億円の返済予定を47億円上回ったことも、山口FGが全面肩代わりする大きな要因となった。

 記者会見で影山英雄社長は、「金融機関と約束した業績目標数字を大幅にクリアし、「健康体に戻ったとの自負」を持って交渉に当たったが、金融機関との調整がうまくいかなかった。そのため山口FGグループに全面肩代わりを引受けていただいた。今後私共の経営方針を理解し支援をいただける金融機関と手を組みたい」と、5月末までに借入先を再編成することも表明。
 その裏には、今まで支援を受けていたみずほ銀行や福岡銀行、西日本シティ銀行などの金融団との軋轢の深さを垣間見せる会見となった。井筒屋は中期経営計画で、本店及び黒崎店を50億円かけて改装する方針を表明しており、その融資にどの金融機関が手を挙げるかに注目が集まっている。

 井筒屋は、非常勤監査役の白川祐治福岡銀行常務取締役が、任期を2年残して5月23日付けで退任することも発表。その理由について影山社長は、「退任の要望があった」と語ったが、山口FGからの借り入れによる全額返済を受けたことが原因と見られている。

<山口FGからの借入金一本化の影響について>
 井筒屋のもともとのメインは富士銀行(現みずほ)であり、純主力行の福岡銀行、山口銀行の2行の3行体制で協調融資体制を組んでいた。しかし、みずほ銀行のシェアの縮小にともない、西日本シティ銀行が純主力銀行の一角を占めるようになり4行体制となった。
 今回、井筒屋から借入金返済を受けた主要取引行である福岡銀行、西日本シティ銀行の2行は北九州市内で圧倒的なシェアを有している。その2行が井筒屋に距離を置く姿勢をとるものと見られ、返済を受けた他行も追従することが予想されている。今後、井筒屋は、営業面で厳しいしっぺ返しを受けるのではないかと見られている。

 今回、山口FGが井筒屋本体への貸出金300億円(内訳:北九州銀行135億円、山口銀行115億円、もみじ銀行50億円)、山口銀行の山口井筒屋への貸出金約39億円(13年2月28日現在)、その他井筒屋の関連会社への融資を含めると350億円を超える貸出金となる。また、今後、中期経営計画で50億円設備投資を予定しており、他行が協調融資に加わらなければ、山口FGは井筒屋グループに総額400億円を超える貸出となる。

 ある金融関係筋は、「今回の他行肩代わりは、貸出金が伸びない山口銀行ともみじ銀行が仕掛けた苦肉の策ではないか。山口ともみじで肩代わり資金を出したのは、メインの北九州銀行の経営基盤が脆弱なため、融資規制に抵触するために取ったものと見られている。山口銀行はかつて小倉そごう、黒崎そごう、広島そごうなど、そごうグループに180億円を融資して焦げ付きを出しており、その二の舞となるのではないか。むしろ返済を受けた金融機関は安堵の表情を浮かべているのでは」と話した。

 福岡の岩田屋、大分のトキハ、熊本の鶴屋、鹿児島の山形屋などの地方の百貨店は井筒屋と同様、品ぞろえを充実させた大手百貨店の通販事業や、大手スーパー・ユニクロなどの専門店などとの競争激化により、厳しい経営環境に直面している。今回の山口FGによる井筒屋グループへの巨額な融資をめぐって、山口銀行の取引先やOBからも経営に与える影響が大きすぎるとの懸念の声が挙がっており、井筒屋と山口FGグループとの運命共同体的な融資が吉と出るか凶と出るか、返済を受けた金融機関は固唾を呑んでその行く末を見守っている。

【北山 譲】


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