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羅針盤なき事業承継~それぞれの"千鳥屋"の行く末は(2)
流通
2013年8月 8日 13:26

 「千鳥饅頭」、「チロリアン」など福岡を代表するお菓子を手掛ける"千鳥屋"。土産菓子屋として一時代を築いたが、親族たちは遺産相続のトラブルを抱え、それぞれの道に進んだ。時は流れ、世代交代により若返りが進むそれぞれの"千鳥屋"の問題を追った。

<道筋示されず トラブル発生>
 1995年12月、2代目の原田ツユ氏が逝去。前述のとおり、自身の息子たちがそれぞれバラバラに事業展開を行なっていたが、ツユ氏は生前に遺書を残していなかった。そのため、自分の死後の「千鳥屋」としての方向性や道筋、遺産問題にかかわる方針などが子に示されることはなかった。
 ツユ氏は生前、兄弟7人に不動産を贈与していたが、多くの物件で持分所有の形をとった。その後、これが火種となって親族が揉め、それぞれが疎遠となる。現在でも、持分不動産の問題は続いており、10年7月で閉店となったタイル張りの中洲の店舗は未だに複数の所有者がいる状態が続く。バラバラとなった親族が揃う場もなく、話し合いは進んでいないという。

<商品の絞り込みと兄弟分裂>
鳥饅頭総本舗 4つに分かれた"千鳥屋"のうち、福岡に残った次男・光博氏が手掛けた千鳥屋は、現在、「千鳥饅頭総本舗」となっている。登記上の本社は博多区呉服町だが、実質の本社は糟屋郡新宮町のセントラル工場内にあり、現在、福岡市を中心に40店舗を展開している。

 光博氏は、チロリアン発売の翌63年からヨーロッパで修行し、その頃にウルズラ夫人と出会う。帰国後は、ドイツ菓子店「エルベ」、69年にはパンの「スベンスカ」を起こした。

 同社の設立は、ツユ氏が亡くなった後の97年8月。2000年にスベンスカを吸収合併、同年チョコレート専門店「アナベル」を出店する。05年に現商号の千鳥饅頭総本舗となったが、光博氏は悪性リンパ腫に侵され08年6月に逝去。その後はウルズラ夫人と3人の息子たちが事業を引き継いだ。

 光博氏とウルズラ夫人の間には、長男・浩司氏(1972年生)、次男・健生氏(1975年生)、三男・広太郎氏(1978年生)の3人の息子がいる。光博氏死去後、一時はウルズラ氏が代表権を持ち、二男・健生氏が代表権のない社長となり、2人で組織経営基盤の見直しや再構築に努めていた。

チロリアン 現在の役員体制となったのは11年12月。長男・浩司氏が代表取締役社長に就任し、ウルズラ夫人は代表権のある会長職に就いた。三男の広太郎氏が取締役となり、企画室室長を務めることとなった。社長経験もある次男の健生氏は、登記上解任となっている。
 長男の浩司氏は以前、(株)アナベルジャパン(本社:東京都中央区)として、東京でのアナベル拡大を狙い進出したが、店舗を閉め福岡に戻ってきたという経緯がある。現在、アナベルジャパンは休眠状態だ。
 健生氏が保有していた株式は、ウルズラ氏が保有することを条件に、健生氏はベーカリー部門「スベンスカ」をもって独立した。菓子業界が伸び悩み、企業としても長く苦戦を強いられる状況が続くなか、同社はベーカリー部門を廃止する方針を固めた。

 しかし、健生氏は、約8年近くもベーカリーに携わり、ベーカリー事業部長も経験。ベーカリーに対する思い入れは強かった。「スベンスカ」は、博多駅など福岡の主要拠点に店舗も構えており、約40年間続いてきたため相応の知名度がある。健生氏は、12年3月に法人を設立し、独立。スベンスカ2店舗(大丸福岡天神店、大丸パピヨン店)を引き継ぎ、12年5月から天神プレイスWEST棟1階にて「BROT LAND」というパン屋をはじめた。現在、健生氏が手掛ける会社には千鳥屋との繋がりや援助などはなく、独立して事業を行なっている。

 総本舗から見ればベーカリー部門がなくなったが、洋菓子も複数を廃止し絞り込みを行なっている。担当者によると、「納得のいく洋菓子ではなかった」という。商品の絞り込みを行ない、売れる商品に特化して起死回生を狙っているのである。

(つづく)
【柚木 聡美】

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