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韓国経済ウォッチ~IT企業の盛衰
経済
2014年3月24日 10:52
日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

<永遠の王者はない>
 韓国はIT先進国であるとよく言われている。国土面積がそれほど広くなく、人口の密度が高いため、インフラ投資がしやすいのもその一因であろう。また、韓国語はパソコン、携帯電話で文字入力をするときに、とても効率的な文字であることも原因ではないかと筆者は考えている。今、韓国は世界的に、IT分野ではテストベッドの役割を果たしている。一番最初に韓国に製品を投入し、顧客に使ってもらうことによって商品を完成化していく国であるのだ。

korea.jpg しかし、韓国は市場自体が小さいため、韓国企業は製品開発段階から世界市場を意識した製品開発をしている。その際に、高い技術力を持っていた日本が隣国であったことは、韓国の今を語るうえで欠かせない。日本の高い技術を取り入れるところから、韓国の産業は成り立った。そのようにスタートした韓国の産業であったが、1990年代にデジタル化の波が押し寄せるなかで、両国の状況は逆転するようになった。
 今現在、三星(サムスン)電子とLG電子など韓国のIT企業は、世界市場ではかなり奮闘をしている。三星電子は、ブランドコンサルティンググループであるインターブランドが選定したブランドランキングで世界8位に上るなど、10年前と比べると韓国企業が善戦しているのは間違いない。

 しかし、その一方で日本と中国の追い上げも段々激しくなっていて、韓国企業の地位も磐石ではないという懸念する声があるのも事実である。業界の専門家は日本のソニーとシャープのように、全世界の頂点に立っていた企業でも変化と革新をおろそかにすると、一瞬にして王座の地位を譲り渡した前例があることを、肝に銘じる必要があると指摘している。

<日本企業の教訓>
 今から10年前である2004年度は、日本を代表する企業の1つであるソニーが初めて営業損失を出した年である。ソニーは結果的には産業のパラダイムシフトにうまく対応することができず、1990年代から徐々に競争力を失い始めていた。

sony.jpg ソニーは半導体、TV、カセットプレイヤーなどにおいて、世界最高の品質を誇っていた。完成度の高いアナログ技術を保有していたソニーにとっては、新しい試みであるデジタル技術はとても評価に耐えないものに見えたに違いない。それから顧客もデジタル製品に拒絶反応を示していた。高度な技術を持っていた会社としては、音質の悪いMP3、色彩表現力に問題のある液晶ディスプレイ(LCD)などに投資をすることはできなかった。アナログ市場規模はデジタル市場に比べて大きかったし、アナログ市場は成長を続けていたので、既得権を放棄してデジタル市場に参入するのは容易ではなかった。技術革新にこだわりながら、顧客の要求に耳を傾け、高い売上高と利益を保証してくれるハイエンド機器に力を注いでいた。

 その間、安っぽくて音質の悪いMP3プレヤーを製造していたデジタル企業群は、最初は低価格市場を掌握した後、技術革新を続け、高品質のデジタル製品も出荷できるようになった。その結果、アナログ市場をデジタル市場に変えてしまった。
 日本の企業は成長している産業に固執するあまり、環境の変化にうまく対応することができなかった。日本の企業はデジタルへの転換が本格化した1990年代に、半導体と液晶ディスプレイに対する戦略的な投資を行なわず、伝統的な垂直統合型ビジネスモデルを維持していたと専門家は分析している。

 日本企業には技術に対するプライドを重視し、よく売れる商品よりも自社の技術の優位性を誇示できる製品を出荷したり、低価品の市場を軽視する傾向すらあった。アップル社は2001年度にiPodを出してMP3の市場がスタートしたのに、ソニーは長い間ウォークマンとMDプレイヤーにこだわった。TVもトリニトロン方式にこだわり、液晶ディスプレイTVの製造を中止し、ブラウン管テレビの生産工場を建てたりした。
 シャープは一時、液晶ディスプレイパネルをソニーと松下に供給するのを拒み、そのためソニーは液晶ディスプレイパネルを開発するため、三星電子と手を組むようになった。シャープは11年度に3,760億円の営業損失を記録した。

 日本の企業が苦戦している間、韓国の三星電子とLG電子は急速に成長した。90年代の後半から2000年代の半ば頃まで、日本の電子産業は年平均4.3%の成長である反面、韓国企業は22.5%と言う高い成長を記録した。リソースの少ない韓国企業は、特定製品に的を絞って集中投資をする戦略をとったのが功を奏した。三星電子はメモリ、液晶ディスプレイパネル、デジタルテレビ、携帯電話において世界トップシェアを維持している。

<日本と中国の激しい追い上げ>
日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏 しかし、今の状況がどこまで続くかは誰も予断できない。気を取り直した日本と新興経済大国である中国企業の追い上げが激しいからである。市場の変化に対する対応が一時は違ってはいたが、日本企業の技術力、製品力、ブランド力は健在であるからである。

 去年ソニーは、米国のラスベガスで開かれた家電展示会CESで、超高解像度の4K 56インチOLEDTVを披露し、技術力を誇示した。中国の企業はもっと怖い競争相手になりそうだ。テレビにおいて、韓国企業と中国企業の技術格差は1年ぐらいであると業界の専門家は評価している。
 IT市場のスター商品になりつつあるスマホ分野でも、中国市場が成長するにつれて、中国企業の成長も目を見張るものがある。12年度にはレノバー、クールパット、ファーウェイ、ZTEなどが世界市場で上位2位~5位を占め、合計36%の市場占有率を示した。

 三星経済研究所では「韓国主要産業報告書」で韓国経済は「世界経済の低迷、円安による輸出競争力の弱化、日本と中国の追い上げ、次世代技術及び市場の不確実性」に直面していると指摘した。報告書はまた、「競争の激しい産業では一度モーメンタムを失うと競争力を回復するのはなかなか難しい」という分析もしている。

 今後、アジアで繰り広げられる日本、韓国、中国の競争結果は、そのまま国の発展にも影響をおよぼしそうだ。

【劉 明鎬】


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