2024年04月19日( 金 )

【言論弾圧発言】「違憲状態」国会議員よ、図に乗るな

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 自民党の勉強会(文化芸術懇話会)での「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番」「スポンサーにならないことが一番」などの言論弾圧発言は、発言した議員それぞれの問題にとどまらない。

言論封殺は安倍政権の本質

kokkai 自民党は、同会代表の木原稔・同党青年局長(熊本1区)を更迭し、発言した大西英男衆院議員(東京16区)、井上貴博衆院議員(福岡1区)らを厳重注意にした。トカゲの尻尾切りで幕引きできる問題ではない。
 井上議員の国会事務所は、取材に対し、「私の発言が誤解を招いたとすれば、申し訳なく思っています。発言内容は青年会議所時代の事業を紹介したものです。私自身、報道を規制するとか、企業に圧力をかけるとか、そういった考えはございません」とのコメント出した。

 自民党の谷垣貞一幹事長は「自民党の姿勢に誤解を与えた」(NHK番組)と言うが、報道内容が気に入らないからといって、圧力をかけるのは、今回に始まったことではない。
 安倍晋三首相自身が、出演したテレビ番組で、街頭インタビューで安倍政権を批判する声が流れたのに抗議した。「偏向報道」とレッテルを貼って言論を封じようとするのは、安倍政権の体質だ。

 集団的自衛権を行使できるようにする安保法制を巡って、憲法学者の違憲発言、自民党元幹事長らの反対表明に続いて、安倍政権の強硬な姿勢に対し自民党国会議員を支援してきた経営者が離反する動きも起きているという。
 本来、国会議員、官僚らに課せられているのは、憲法尊重義務である。違憲の集団的自衛権を行使できるようにする活動の自由を与えているわけではない。

 今回の言論弾圧発言には、新聞各紙、日本新聞協会編集委員会や民放連盟が、報道の自由、表現の自由の問題として、敏感に反応した。表現の自由が弾圧された後には戦争がやってくるのが歴史の教訓だから、当然である。
 言論弾圧だという批判キャンペーンに拍手喝采している国民は多いだろう。だが、結果むなしく、安保法制が成立してしまえば、結局は「ガス抜き」「溜飲を下げた」に終わってしまう。

国家権力を行使する正統性が無い

 今の日本で起きている異常事態で、その百倍以上重要なのは、国会議員(比例代表選出を除く)に国家権力を行使する正統性がないことだ。憲法が保障した「1人1票」(人口比例選挙)に反して、「1人0.5票」しかない。
 井上議員の福岡1区は「0.58票」、木原議員の熊本1区は「0.63票」しかない。「違憲状態」選挙で選ばれた国会議員(違憲状態国会議員)は、「国政の無資格者」である。安倍首相は、自民党総裁であるが、「違憲状態」首相であり、「国政の無資格者」である。
 「国政の無資格者」には1秒たりとも、国家権力を行使する正統性はない。偽医者が1秒たりとも診療行為が出来ない、無免許運転者が1秒たりとも自動車を運転できないのと同じである。「国政の無資格者」に、集団的自衛権を行使できる法律をつくることや、憲法改正の発議をすることがあってはならない。

 升永英俊弁護士は、「国家レベルの異常事態」だと指摘し、それを止める唯一の方法が、最高裁が「憲法56条2項、憲法1条、憲法前文第1文前段が、人口比例選挙(1人1票)を保障している」旨明記した、違憲無効判決を出すことであると言う。

国会議員主権国家が増長を招いた

 「国政の無資格者」=「ただの人」が、ここまで増長したのは、日本が国民主権国家ではなく、国会議員主権国家であるからだ。

 「1人1票」(人口比例選挙)ではない選挙が違憲状態であることは明白なのに、最高裁が違憲無効としないのは、最高裁が長官や判事への実質的な人事権を失いたくないという保身があると指摘されている。違憲無効判決を書けば、次の政権が、法律どおり任命権を行使する「報復」に出ることが予想され、既得権を失うというのだ。安倍政権には、内閣法制局長官の人事慣行を変えた前歴がある。
 「マスコミを懲らしめる」という発想、報復と恫喝は、最高裁まで支配しているのである。
 特定危険指定暴力団工藤会が、脅しで「みかじめ料」を吸い上げてきた構図と変わりない。

 頂上決戦で工藤会壊滅というなら、民主主義の頂上決戦は、国民主権国家の実現である。人口比例選挙の実現によって、国民主権国家、市民社会の誕生が切り拓かれる。国会議員主権国家でいるかぎり、この手の恫喝に国民は屈し続けなければならず、「第2の安倍」「第2の井上貴博」が再生産されるだけである。

【山本 弘之】

 

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