2024年03月29日( 金 )

太宰府天満宮の参道に大正時代から続く老舗「かさの家」(後)

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(株)かさの家

伝統の味をそのままに

umegaemoti 政略によって大宰府に流された道真公は、廃屋同然の館で蟄居の身となり、食事にも事欠くありさま。暮らし振りを見かねた近くの老婆が、道真公が好んだ餅を梅の枝にさし、格子越しに差し上げた、という伝説がある。伝説をもとにつくられた「梅ヶ枝餅」は、もち米とうるち米をブレンドした生地で粒あんを包み、香ばしく焼き上げたものだ。シンプルな素材だけに、生地と餡のバランスが決め手となる。かさの家では、昔から代々続く味を大切に守り、焼き方や出来具合にもこだわった梅ヶ枝餅を提供している。

 「道真公の誕生日であり命日でもある25日は、『天神さまの日』とされています。梅ヶ枝餅の販売店では、毎月25日に「よもぎ入りの梅ヶ枝餅」を出します。昔からよもぎ入りはありましたが、一時中止にしていました。色が出にくいということで、緑色の着色料を使う店舗が出てきたからです。しかしお客さまからの熱い要望があり、数年前から復活させました。『よもぎ入りの梅ヶ枝餅』は、多くの方々に親しんでいただいております」(不老氏談)。

 「梅ヶ枝餅」という名称は、太宰府梅ヶ枝餅協同組合に商標登録されており、組合員のみ「梅ヶ枝餅」という商品名で販売ができる。協同組合が材料を指定し管理しているため、梅ヶ枝餅の品質は保たれており、どの店舗も同じ材料で「もち皮」をつくる。ただし、あんこや砂糖の量、塩加減などは各店舗によってレシピが違うため、それぞれに個性を持つ。

 「昨年10月17日、太宰府天満宮に隣接する九州国立博物館が10周年を迎えました。記念日に協同組合で何かできないかと考え、ふくおか食品開発支援センターと共同開発した『古代米入りの梅ヶ枝餅』を販売しました。福岡県産の黒米を粉砕し生地に練り込んだことで綺麗な薄紫色に仕上がっています。当日のみの販売予定でしたが大変好評だったので、毎月17日の「きゅーはくの日」に継続して販売することになりました」(不老氏談)。

 「古代米入りの梅ヶ枝餅」は、黒米を混ぜたことにより色素成分の効果で紫がかり、生地の香ばしさとパリッとした食感が一層際立ったという。太宰府天満宮や九州国立博物館を後押しする、新たな名物の誕生となった。

参道を守り後世へつなげる

 不老氏は、太宰府梅ヶ枝餅協同組合の理事長や九州国立博物館振興財団の評議員、太宰府観光協会の会長なども兼務し、太宰府市への貢献度が高い。
 「太宰府天満宮には、年間880万人の参拝者が訪れています。私には、太宰府に年間1,000万人を呼びたいという夢があります。太宰府天満宮の参道は、商業地区として何を出店してもよい場所で、以前はスマートボールなどがありました。しかし参道には相応しい店というものがあります。神様へと続く神聖な場所では、相応しくないものは自然と淘汰されてきました。参道を守り、参拝者や観光客に何度も来たいと思われる太宰府をつなげていきたいのです」(不老氏談)。

 不老氏は、今年の6月24日~28日に福岡市で開催された「第99回ライオンズクラブ国際大会」を招聘した立役者でもある。ライオンズクラブ国際大会は、世界各国から会員約3万5,000人が参加し、世界と福岡をつなぐ橋渡しとなる。彼らの滞在期間中、歴史ある太宰府天満宮の参道を散策する人々は、さらに数を増したに違いない。古き良き日本の面影を今に伝える建物や石畳は、海外の人々を魅了したことだろう。これはまた、不老氏の夢につながっていく。

 さまざまな役職を合わせ持つ不老氏だが、特筆すべきは1988年のソウルオリンピックに出場したクレー射撃のオリンピアンだということだ。また、2020年東京オリンピックに向けて、JOC(国内オリンピック委員会)からクレー射撃のコーチングスタッフに委嘱されている。「オリンピアン候補の発掘や育成を担当しています。福岡から射撃のオリンピアンを是非とも誕生させたいのです」(不老氏談)。自身の後裔を育てるべく、ジュニア世代の発掘・育成・強化にも力をそそぐ。
 2020年の東京オリンピック・パラリンピックまで、不老氏の活躍は続いていく。

(了)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:不老 安正
所在地:福岡県太宰府市宰府2-7-24(太宰府天満宮参道)
設 立:2005年3月
資本金:1,000万円
TEL:0120-818-151
URL:http://www.kasanoya.com

<プロフィール>
furou不老 安正
1944年1月生まれ。(株)かさの家の代表取締役を務めるほか、ライオンズクラブ国際協会の元国際理事、第99回ライオンズクラブ国際大会ホスト委員会の委員長など、さまざまな役職を担っている。

 
(前)

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