2024年04月20日( 土 )

大ピンチに陥った朴大統領、政局は泥沼に(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 今、韓国は、朴槿恵(パク・クネ)大統領の知人女性との関連した疑惑で、大騒ぎになっている。その結果、朴大統領は大ピンチに立たされている。

korea4min 韓国テレビ局のJTBCは10月24日夜、朴大統領の演説草稿など44点が、民間人である知り合いの女性に提供され、そのファイルが女性のパソコンで発見されたと発表した。報道によると、演説草稿は演説前にその女性に提供され、その女性はそれを修正して返し、修正された演説文を朴大統領は読んでいたという。もちろん演説の内容は重要機密であるが、それがどのようにして民間人の手にわたるようになったのかが、争点になっている。
 もっと深刻なのは、演説文だけでなく、軍事や外交関連の機密情報も、この知人女性に提供されていたという。機密が漏洩したこともさることながら、演説文というのは大統領の統治の方向性、哲学などを示すものである。そのため、これを修正するということは、国政に影響力を行使できることを意味し、看過できない重大な問題である。

 この報道を受けて25日、朴大統領はすぐに謝罪文を発表。だが、国民の怒りは収まっておらず、事態は泥沼にはまりそうだ。
 29日の夜には3万人が集まって、朴大統領の退陣を求める抗議集会を開いた。真相が究明されない限り、政局はますます混迷しそうだ。

 韓国はもともと日本と違って、大統領制を採用している。大統領制というのは、大統領に権力が集中しており、大統領は絶大な力を有している。現在の大統領の権力がこれほど強力になったのは、李朝時代からの伝統と、北朝鮮との対峙などが理由であろう。

 ところが、その強力なはずの権力も、任期の終盤になるといわゆる“レームダック現象”を起こす。その時期によく起こることは、大統領の側近、または家族・親戚による不正事件だ。

 金泳三(キム・ヨンサム)元大統領時代も、政権末期に次男がスキャンダルを起こし、政権が急激に衰えた。また、金大中(キム・デジュン)元大統領の時代にも、息子が問題を起こし、そこから金大中元大統領は支持率を落としていった。

 しかし今回の場合は、これまでのレームダック現象とも性格が違う。公には知られていない知人女性が、朴大統領の威を借りて、陰の実力者として政治に介入。人事や政策などを意のままにしていたという、およそ民主国家では考えられないようなことが起こったのだ。

 これまでは、ただの噂扱いだったが、今回の報道がきっかけになって、いろいろな事実が明るみに出てきている。

(つづく)

 
(後)

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