2024年04月20日( 土 )

地雷撤去から「自立支援」活動へ(前)

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一般財団法人 カンボジア地雷撤去キャンペーン 理事長
大谷 賢二 氏

 一般財団法人カンボジア地雷撤去キャンペーン(Combodia Mines-remove Campaign=CMC)は1998年4月の結成以来、カンボジアでの地雷撤去活動・地雷被害者救済に尽力してきた。現在、残存する地雷の数は約3分の1に、年間の地雷被害者数は約20分の1にまで減少した。カンボジアの経済は急成長を遂げ、首都プノンペンを中心にインフラ整備も進んだ。訪れる観光客数は年々増加し、2016年には600万人を超える試算もある。そうした観光業を中心とするサービス業が牽引し、近年の経済成長率は7%超を維持する。カンボジアがそのような状況となった今、大谷賢二理事長は、地雷被害者の自立支援こそが求められていると考える。

地雷被害者は着実に減少 活動の成果

cmc 理事長の大谷賢二氏が個人的に活動を始めたのは、CMCを結成する2年前の1996年。カンボジアには約1,000万~1,100万個の地雷が埋められているとされていた。1970年に起きたクーデターから91年にパリ和平協定が締結されるまでの約20年におよぶ、東西冷戦および中ソ対立を背景とする内戦で、中国製、旧ソ連製、ベトナム製、アメリカ製と多岐にわたる地雷が埋設された。どこに埋設されたか場所の記録もなく、またベトナム戦争時に国内に投下されたクラスター爆弾の不発弾も地雷と同様の危険性があり、そうして実際に埋められた「地雷」の総数は、把握することが困難となっている。

 地雷はカンボジア全土に埋められたが、とくにクメール・ルージュ軍と政府軍との内戦の主戦場となったタイ国境周辺に集中する。ジャングル地帯に地雷が多いのは、生活のための薪を採りに山に入った住民を狙うためだったと大谷氏は言う。たとえば、バンテアイ・ミエンチャイ州マライ郡トゥール・ポンローコミューンに、データ・マックスなどが建設支援した中学校の敷地内からは400個もの地雷が発見された。中学校の落成式に出席した村長と副村長はともに地雷被害者で、足を失っていた。

cmc5 地雷には大きく分けて、対人地雷と対戦車地雷の2種類がある。対人地雷は人の命を奪うのではなく、手足だけを吹き飛ばして負傷させることで、敵方の戦力や戦意を奪う目的で使用される。対戦車地雷は、文字通り戦車のキャタピラーを破壊し走行不能にすることを狙ったものだ。「近年、ヒトやモノの物流が盛んになり、人が通っても事故が起こらないため安全とみなしてきた地帯、いわゆる『みなし安全地帯』でのバスやトラックが地雷事故に遭うケースが増えています」と大谷氏。対戦車地雷は約500kgから1tの重量で作動する。刈り入れ後の稲などをたくさん積み、農民が乗り込んだトラクターは相当な重量となり、歩いても安全だった場所の地中に眠っていた対戦車地雷を作動させてしまう。対戦車地雷は戦車の装甲を破壊する威力があり、そのため死亡事故が増えているというのだ。

 しかし、年間の被害者数は確実に減少を続けている。CMC結成前、大谷氏が個人的にカンボジアで活動を始めたころ、96年には被害者は年間約2,000名に上る数だったが、2013年時点で111名にまで減った。そこで大谷氏が目を向けるのは、すでに地雷被害に遭った被害者の自立支援だ。

(つづく)
【吉井 陸人】

■INFORMATION
理事長:大谷 賢二
所在地:福岡市早良区西新1-7-10
設 立:2011年4月
(結 成:1988年5月)
TEL:092-833-7676
URL:http://cmc-net.jp/

 
(後)

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