2024年04月20日( 土 )

鹿島建設・耐震偽装マンション問題、第三次耐震診断の結果は?(6)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 ――このマンションが倒壊した場合、近隣の建物などに影響は出ないのでしょうか。

仲盛 昭二 氏<

仲盛 昭二 氏

 仲盛 本件マンションの高さは、塔屋まで含めると50mを超えます。地震により倒壊した建物の一部は、間違いなく敷地外にまでおよび、近隣の建物や人々に被害を与えます。また、マンションの前面道路や、緊急道路に指定されている西側の国道209号線にまでおよぶ可能性があります。このような事態になった場合、本件マンションの区分所有者は「加害者」という立場になってしまいます。「耐震強度が基準を満たしていないマンションを、建替えることなく放置した」ということで、近隣住民から、責任を追及される可能性もあり得ます。このようなことにならないためにも、建替えを求める裁判を行っているのです。

 ――鹿島建設は東京の南青山のマンションでも施工ミスをしていました。東京では、迅速に建替えを決定しました、この久留米市のマンションと何が違うのでしょうか。

 仲盛 東京の南青山のマンションにおける鹿島建設の施工ミスの事例は、居住者の入居前に発覚したということもありますが、一番の違いは「マンションの価格」ではないでしょうか。南青山のマンションは、いわゆる億ションです。これに対して久留米の本件マンションは一般的な価格帯のマンションです。
 一方では迅速に建替えを決定し、一方では下請業者を訴えながら、自らの施工ミスは認めないという鹿島建設の姿勢について、本件の原告の一人は「鹿島建設はマンションの価格によって対応が違う。所詮、金持ち優先なのか」と、怒りをあらわにしています。この鹿島建設の一貫性のない企業姿勢は、とうてい納得しがたいものです。

 ――設計事務所の木村建築研究所は、設計の偽装について認めているのですか。

 仲盛 このマンションの設計と工事監理を担当した木村建築研究所は、自ら希望して、証人尋問を行いました。建築確認申請書には木村建築の記名押印があり、建築主と鹿島建設の工事請負契約書にも立会人として木村建築の記名押印(実印)があります。
 しかし、書面や尋問の場での木村建築の主張は、「設計はしていない」、「建築確認申請書には、誰かが勝手に記名押印している」、「工事請負契約の立会人として実印が推してあるが、社員が勝手に持ち出した」などと主張し、証人尋問の場でも失笑が漏れていました。
 また、「勝手に名前を使われた」と主張する一方、「15階建ての9階より上の階の配筋検査に社員が行って、鉄筋のかぶりを是正させた」とも答弁しています。主張に一貫性が無いのですが、「是正しなければならないほどの鉄筋のかぶり厚さ不足があった」事実を証言したということです。木村建築の配筋検査が十分であったかどうかは別としても、8階より下の階は、鉄筋のかぶり厚さが不足したまま施工された可能性が高いといえます。木村建築の責任逃れの証言は、図らずも、「鉄筋のかぶり厚さが不足している」鹿島建設の施工の実態を証明する結果となりました。

 ――鉄筋のかぶり厚さが不足することは、一般的に多いことなのですか。

 仲盛 鉄筋を組み立てる際には、スペーサーという部品を使って、かぶり厚さを確保します。建築現場を見ると、型枠の中に鉄筋が並べられていて、鉄筋にリング状のプラスチック製の部品が通されているのを見ることができます。このプラチック製の部品が型枠と鉄筋の距離を強制的に確保するので、通常は鉄筋のかぶり厚さが不足することはあり得ません。本件マンションにおける鹿島建設の施工で、鉄筋のかぶり厚さ不足が相当な数、判明しているということは、よほどずさんな施工が行われていたということの証です。

(つづく)

 
(5)
(7)

関連記事